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2018/8/30 【文化財小話】ベッコウダケの恐怖

 昭和54年12月、高さ22メートル、幹に損傷もなく、樹冠も整正で、樹勢も極めて旺盛、全国的にも非常に珍しい巨木であるとして「岩国市吉香公園のエンジュ」が、山口県指定天然記念物に指定されました(右の写真)。
 あれから約40年間、今年3月、岩国市民のみならず広く県民に親しまれてきたこのエンジュの大木は惜しまれながらも伐採されました。

 この大切なエンジュを伐採にまで至らしめた犯人は何と、「ベッコウダケ」というキノコでした。
 そもそも、エンジュに異常が見られたのは昨年の夏のこと。幹の根元付近に小さな白い塊が見つかりました。その後、この物体が少しずつ成長、数も増加してきたため、樹木医が幹内部を調査したところ、地上50㎝のところで約78%が腐り空洞になっていることがわかりました。そのまま放置しておくと、葉や枝が受けた風により、木が根元から倒れて通行人を巻き込んだり、隣接する重要文化財である吉香神社を傷つけたりする可能性もあることから、岩国市が県教委に「県指定文化財の解除」を申請、今年2月、県文化財保護審議会に諮られた結果、県指定が解除され、伐採に至りました。
 通常、キノコ類の多くは木材腐朽菌というもので、枯れた樹木や、生きた樹木でも特に死んだ組織の部分で、木材を分解して土に帰してくれます。このため、生態系の中では大変重要な役割をしています。しかし、このベッコウダケは心材腐朽菌という種類で、菌糸が生きた木材の中心部の組織に侵入し、固い幹の心材部分をも腐らせてしまうという恐ろしいキノコです。
 さらに驚くことに、このキノコが侵入した樹木の特徴は、周囲が朽ちても幹内部にある根から水分を吸収し枝まで運んでいく道管の部分をそのまま残すため、葉っぱは青々と健康な状態を保ち、見た目は全く異常がありません。だからこの事実を知らない人たちはみな口を揃えて、「なぜ、こんな健康な木を切ってしまうの・・・」とびっくりした声をあげていました。

 ベッコウダケの子実体(キノコ部分)は、左の写真のように、少しオレンジがかった薄茶色です。梅雨時期から夏にかけて大きく成長します。ジメジメした梅雨の時期に、通勤中や散歩中に写真のようなキノコが根元に生えているのを見つけたら、すぐに樹木の専門家に見てもらうよう心がけたいものです。

 そして、このベッコウダケの恐怖を少しでも多くの人に伝え、より多くの人の目で見守ることで、指定・未指定にかかわらず昔の人たちが大切に育んできた文化財を、これから先の時代にも確実に伝えていきたいと思います。(S)



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