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文化財の概要

文化財名称

紙本墨画淡彩湖亭春望図

文化財名称(よみがな)

しほんぼくがたんさいこていしゅんぼうず

市町

岩国市

指定


区分

有形文化財

時代

室町時代

一般向け説明

 岩国市横山、吉川報效会の所蔵である。
 掛幅装で、本紙の寸法は縦84.0cm、横36.4cm。
 早春の湖辺、水亭に坐して対岸を見やる高士の姿をえがく。対岸には五重塔が夕もやのなかにそびえている。上方に天与清啓の賛がある。絵には印章・落款はないが、雪舟筆の伝承がある。
 天与清啓は15世紀はじめ頃の出生。禅僧で、大内盛見、大内教弘父子との関わりがあった。1453年と1467年の2度にわたり遣明使節となって渡海している。2度目の時は正使であり、一行の中には雪舟等楊もいた。
 天与清啓は、1456年(寛正6)に、仁保弘有像へ着賛しており、拙宗筆山水人物への着賛もある。湖亭春望図には彼が渡航を前に周防に滞在していた時期、寛正6年頃に賛をした可能性がある。製作時期が限定できる山水図として重要である。

小学生向け説明

 岩国市の吉川史料館にあります。
 寸法は、たて84cm、横36cmです。
 早春の湖辺、水亭に坐して対岸を見やる高士の姿をえがいています。対岸には五重塔が夕もやのなかにそびえています。雪舟が描いたといわれる伝承があります。
 賛をかいた天与清啓(てんよせいけい)は1400年代はじめごろに生まれました。禅僧で、大内盛見(おおうちもりみ)教弘(のりひろ)父子とかかわりがあった人です。1453年と1467年に遣明使節となって中国へ渡っています。二度目のときには雪舟もいました。
 天与清啓は、1456年に、仁保弘有像(県指定有形文化財)に賛をかいますが、これも同じ年に、彼が中国へ渡る前の山口に滞在していた時期にかかれたものとおもわれます。

文化財要録

要録名称

紙本墨画淡彩湖亭春望図
 天與清啓の賛がある 

指定区分・種類

有形文化財(絵画)

指定年月日

平成8年5月24日

所在地

岩国市横山2丁目7番3号
 (吉川史料館)

所有者

財団法人 吉川報效会

制作等の年代又は時代

 天與清啓の経歴などから、15世紀60年代ごろの着賛であり、それに近い時期の作品と考えられている(別紙「天與清啓の遺文」参照)。

製作者

不詳

由来及び沿革

 本図には、天與清啓の題詩「湖亭春望」(七言律詩)があり、図に印章・落款はないが、雪舟筆の伝承がある。
 図については、狩野探幽(1602~74)の極札により、「雪舟筆」、「自賛」の「山水」とされている。自賛というのは妥当でないが、周文風の様式をふまえることから、近年、「雪舟様の画法を伝えるが、中央の松樹の描写法、技巧的な図様構成、遠景の五重塔など、なお、検討を要する」(武田恒夫、『吉川家歴史資料目録』解説)、あるいは「中央画壇に学んだ経歴のもちぬし」(宮島新一)などの見解が出されている。
 賛者の天與清啓は(生没年不詳、15世紀はじめ頃の生まれか)、元の渡来僧清拙正澄(1274~1339)の系統の禅僧(臨済宗大鑑派)である。大内盛見(1377~1431)、大内教弘(1420~65)父子との関わりがあった(寛正6年(1465)「飛泉亭之詩并序」)。また、享徳2年(1453)と応仁元年(1467)の2度にわたり遣明使節となって渡海している。2度目の時は正使であり、渡明の一行の中には別船であるが雪舟等揚もいた。
 天與清啓は、寛正6年(1465)8月、仁保弘有像(山口市、県指定)にも着賛しており、拙宗筆山水人物画への着賛(七言絶句)も知られる。湖亭春望図には、彼が渡航を前に周防に滞在していた時期(寛正6年乃至7年頃)に賛をした可能性がある。
 なお、本図が吉川家に伝来した事情は不明であるが、同家には、他に、応仁元年(1467)書写・大内義興所持の「貞応本古今集」、大永2年(1522)陶弘詮書写の「吾妻鏡」(重要文化財)など、大内氏関連文化財の伝来が知られる。

品質及び形状

(1)寸法 (本紙)縦84.0㎝ 横36.4㎝
(2)品質、形状等
 紙本墨画、淡彩、掛幅装。早春の湖辺、水亭に坐して対岸を見やる高士の姿をえがく。対岸には五重塔が夕もやのなかにそびえている。
 近景の垂直と遠景の水平との呼応によって基本的な構図が組み立てられている。岸から一本の松が美しい枝ぶりを見せながら立ち上がる点や、近景が対角線内に収まるいわゆる辺角の景であることなど、室町幕府お抱え絵師であった相国寺僧周文風の様式がふまえられている。
「白衣観音図」(豊浦町、県指定)や「天神図」(山口市、国指定)と同様、上方に着賛があり、室町時代の詩画軸の一種である。
 賛(題詩)は次のとおり。
「湖亭春望
 (印) <暁遠夜鶴>
 湖曲寒残梅未盡 新晴散策恣閑遊
 塵間回首百年閙 世外藏縦万事休
 暮嶂層々千仏頂 春波渺々一僧眸
 夕嵐渓上湧孤塔 遠眺使吾終日留
 天與老雪(印) <清啓>」

地図

画像

紙本墨画淡彩湖亭春望図 関連画像001

紙本墨画淡彩湖亭春望図 関連画像002