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文化財の概要

文化財名称

国森古墳出土品

文化財名称(よみがな)

くにもりこふんしゅつどひん

市町

田布施町

指定


区分

有形文化財

時代

古墳時代

一般向け説明

 この古墳は、熊毛郡田布施町にある。畿内型の前方後円墳は、山口県では4世紀中頃からつくられるが、この古墳はそれより古い形の四角形の方墳で、一辺が約30mもある。古墳時代前期(4世紀初)の築かれたと考えられている。古墳中央部の墓穴(長さ8.6m、幅6m、深さ1.7m)の床の朱の広がりから、長さ4mもある箱式木棺があったと推定される。
 副葬された遺物は次の通り。
・銅鏡  :連弧文昭明鏡1 (面経9.1m。頭か胸に鏡面を上に副葬)
・鉄製武器:剣1、槍1、ほこ1、やじり39
・鉄製工具:斧2、のみ1、やりがんな2、削刀子(けずりとうす)3、やす5、針1
遺物の種類では、鉄製武器が多く、鉄製農具や玉類がないことに組み合わせの特色がある。削刀子は、同じものが畿内と岡山県の古墳に一列ずつしかない特殊な工具である。このことは、この古墳にまつられている豪族は、大和の勢力や岡山の支配者とのつながりを持ちながらも、畿内と九州を結ぶ瀬戸内海航路の東の重要地域である周防部を支配する独立した勢力の支配者と考えられる。

小学生向け説明

この古墳は、熊毛郡田布施町にあります。古墳の形は四角形をした方墳(ほうふん)と呼ばれるもので、一辺が約30mもあります。古墳時代前期(4世紀初)に築かれたと考えられています。墓穴には長さ4mの箱式木棺があったと考えられています。
 副葬品には次のようなものがありました。

・銅 鏡 :1  頭か胸のあたりに鏡の面を上にしてありました。
・銅製武器:剣1 やり1 ほこ1 やじり39
・鉄製道具:おの2 のみ1 やりがんな2 けずりとうす3 やす5 針1

 この古墳にまつられている豪族は、大和の勢力や岡山の支配者とのつながりを持ちながらも、畿内と九州を結ぶ瀬戸内の重要地域である周防部を支配する独立した勢力の支配者と考えられています。

文化財要録

要録名称

国森古墳出土品
 銅鏡
 鉄剣
 鉄槍
 鉄矛
 鉄鏃
 鉄斧
 鉄鑿
 鉄カ
 鉄削刀子
 箝状鉄製品
 針状鉄製品

指定区分・種類

有形文化財(考古資料)

指定年月日

昭和63年11月25日

所在地

田布施町郷土館
(田布施町大字下田布施875番地6)

所有者

田布施町

由来及び沿革

出土状況
 昭和62年度に田布施町教育委員会が重要遺跡確認調査として実施した発掘調査の際、主体部の粘土床上面から2項に記載したとおりの副葬品が一括出土したものである。
 発掘調査の概要及び本件出土品の詳細については、『国森古墳』田布施町教育委員会.1988.に記載されている。

品質及び形状

(1)銅鏡
連弧文(内行花文)昭明鏡(れんこもんしょうみょうきょう)。円座鈕(えんざちゅう)で、鈕孔の抉(えぐ)りは大きい。鈕座の周囲に8弧の連弧文がめぐり、斜行櫛歯文帯(しゃこうせっしもんたい)、銘帯、斜行櫛歯文帯をへて、素文(そもん)の平縁にいたる。銘帯にはゴシック体の計15文字が認められる。鋳上がりが悪いためか、あるいは手擦れによる磨耗のためか全体に明瞭に読み取りにくく、更に薄い錆がおおっていて、現状では判読不能の文字が多い。わずかに「■内□□□□□□□□□□(光)□□(夫)日月」が確認できる。面径9.1cm、鈕径1.46cm、鈕高0.6cm、縁の厚さ0.49cm、縁幅1.25cm、反り0.1cm。
(2)鉄剣
銹化により身の一部を欠落するが、それを除けば完形である。全長33.5cm、刃部長21.7cm、身幅は切先近くで2cm、関(まち)部で2.6cm、厚さ0.65cm。身の中央には鎬(しのぎ)が走り、断面菱形を呈する。両関をつくり、茎は長さ11.8cm、幅1.6~1.8cm、厚さ0.4cmの断面長方形をなし、把木の一部や鹿角製の把頭装具の痕跡をとどめる。
(3)鉄槍
目釘穴は茎(なかご)尻に1孔それらしきものが認められるが、木質のため判然としない。刃部の関近くから茎にかけては、いわゆる呑口式の拵(こしらえ)をもつ。切先近くには、布目痕の付着が認められる。全長37.9cm、刃部長34.3cm、身幅は関部で3.5cm、切先近くで2.4cm、厚さ0.6~0.5cm。身の中央には鈍い鎬が通り、断面は扁平な菱形を呈する。両関作りで、茎の長さ3.6cm、幅2.3~1.9cmで、厚さ0.5cmの断面長方形をなす。
(4)鉄矛
全長26.3cm、刃部長17.6cmで、身幅は関部で2.2cm、切先近くで1.4cm、関から切先へと幅を狭める。刃部の厚さは0.7~0.6cmで、鎬が認められ、断面菱形を呈する。両関がつくられ、袋部は長さ8.7cm、断面は関部近くで1.1×1.5cmの楕円形、頭部で径2.4cmの円形を呈する。
(5)鉄鏃
出土した計39点の鉄鏃は、平根式(ひらねしき)のもの(9個)と、小型の定角式のもの(30個)に大別され、両者は副葬位置においても明瞭に区別されていた。平根式のもののうち7個は大型で、多様な型体を持っている。平根式の大型のものは、身の長さ5.6~7.6cm、最大幅2.3~3.3cm、厚さ0.3~0.6cm、重さ19.4~36.2g、定角式のものは、身の長さ2.5~3.4cm、最大幅1.3~1.8cm、厚さ0.3~0.5cm、重さ3.4~9.9gである。
(6)鉄斧
板状鉄斧と袋状鉄斧の二種。前者は、両刃で、頭部には木柄の一部とみられる木質、刃部や身の側縁部に布目痕をとどめる。全長14.6cm、頭部幅3.5cm、刃部幅5.6cm、厚さ(身の中央)1cm、重さ441g。後者は、刃部が外彎し、身の各所に布目痕をとどめる。全長10cm、刃部幅5.6cm、厚さ1.1cm重さ222g。
(7)鉄鑿
ほぼ直線刃で、わずかに片刃状をなす。全長13.1cm、刃部幅1.7cm、厚さ1cm。袋部を有す。
(8)鉄カ
刃部は切先がすぼまるものと推定されるが、錆膨(さびぶく)れのため判然としない。出土時には木柄が柄尻までかろうじて残っていて、その木質の表面には布目痕が認められた。2本のうち1本は、身の残存長14.1cm、身幅0.7cm、厚さ0.3cm、木柄の長さ約12cm、幅約1.6cm、全長約18.5cn。他の1本は、残存長4.1cm、身幅0.8cm、厚さ0.4cn、刃部の長さ1.5cm、最大幅0.9cm。
(9)鉄削刀子
3本のうち1本は、ほぼ全形を留める。身の先端は切出し状に作られるが、刃部は反対側の側縁につく。本部は刃部に対して斜めに取り付き、本尻に向かって細くなり先は尖る。全長8.3cm、刃部長は5.1cm、身幅は本部で0.9cm、切先近くで0.7cm、棟の厚さ0.4cmである。他の2本も、切先や本尻を欠くが、同工の作りである。
(10)箝(やす)状鉄製品
5点の内2点は径0.2~0.3cmの断面円形の棒状の身の先端を三角形状に尖らせる。先端部の最大幅0.6cm、厚さ0.25cm。他の3点は、基部に向かって細くなる棒状を呈し、太い側で径0.4cm、基部近くで0.2cmを測る。これらの先端に先の2点が取り付くとすれば、箝としての可能性が強い。
(11)針状鉄製品
両端を欠く。残存長0.8cm、径0.15cm。

地図

画像

国森古墳出土品 関連画像001

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