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文化財の概要

文化財名称

山口県旧県庁舎及び県会議事堂

文化財名称(よみがな)

やまぐちけんきゅうけんちょうしゃおよびけんかいぎじどう

市町

山口市

指定


区分

重要文化財

時代

大正時代

一般向け説明

 山口市滝町にある近代行政建築物。山口県は当初、藩政時代の建物を県庁舎として使用していたが、建物の老朽化を理由に、1911年(明治44)11月の県会で、県庁舎及び議事堂の新築が可決された。設計は大蔵省臨時建築部に依頼し、武田五一、大熊喜邦が担当した。工事は1913年(大正2)から始められ、落成式は1916年(大正5)であった。旧県庁舎は南面する煉瓦造二階建で、建築面積は2395.5平方メートル。要所を花崗岩とする他は、表面モルタル塗とし、横目地を入れて石造風にみせている。屋根は正面中央部を寄棟造り、各隅を宝形造りとし、要所にドーマーウインドウを設けている。主要部は天然スレート葺き(現在銅滓瓦葺き)で、廊下屋根は亜鉛引鉄板である。平面はロ字形で、正面棟の中央前面に車寄、玄関を張出し、背面中庭側に二階を正庁にあてた突出部がある。一階には多くの一般執務室を置き、二階には正庁、知事室など主要室のほか一般執務室がある。
 旧県会議事堂は、旧県庁舎の東に南面して並置されている。建物は煉瓦造二階建で、建築面積は708.0平方メートルである。県庁舎とおなじく要所に花崗岩を用いる他は、横目地を入れたモルタル塗となる。屋根は正面中央を一段高い寄棟造りとし、その上に頂部をドームとした方形平面の塔屋をのせる。要所にドーマーウインドウを設け、本来の天然スレート葺きを現在は銅滓瓦葺としている。平面は横長の正面棟の中央全面に車寄せを突出させ、平面に議場を張り出して配置する。議場は一階南側中央壇上に議長席と演壇を設け、その前方に扇形に議員席を配する。
 山口県旧県庁舎及び県会議事堂は、大正初期の煉瓦造公共建築として数少ない遺構であり、県庁舎と議事堂が一体となって保存されている点でも貴重である。設計は当代を代表する建築家である武田五一、大熊喜邦の二人が担当していて、明治期以後の近代建築の展開を考える上で極めて重要な建築といえる。また意匠は正面車寄の独立石柱の意匠などにみられるように、各所に東洋建築の形をアレンジして取り入れるなど、明治期以後熟成した様式建築を基礎としつつ、大正時代に入ってあらわれた新しい意匠傾向がうかがわれる。 なお、現在、旧県庁舎は県政資料館として、旧議事堂は議会資料館として、一般に公開されている。

小学生向け説明

 これは、1916年(大正5)に建てられたもので、山口市の県庁の敷地内にあります。
 山口県旧県庁舎及び県会議事堂は、大正時代のレンガづくりの公共建築物としては数少ない建物で、県庁舎と議事堂が一体となって保存されている点でも貴重です。また、デザインとして、各所に東洋建築の形を取り入れるなど、明治時代の洋式建築を基礎としつつ、大正時代に入ってあらわれた新しいデザインの傾向がみえます。
なお、現在、旧県庁舎は県政資料館として、旧議事堂は議会資料館として、一般に公開されています。

文化財要録

要録名称

山口県旧県庁舎及び県会議事堂

指定区分・種類

重要文化財(建造物)

指定年月日

昭和59年12月28日 (文部省告示 第147号) 建第2165号

所在地

山口市滝町1番1号
(附工事関係記録は山口県文書館蔵)

(附工事関係記録六冊)山口県文書館

所有者

山口県

制作等の年代又は時代

大正4年9月24日 上棟
大正5年7月10日 完工

員数

二棟

製作者

(1) 設計
  大蔵省臨時建築部部長 妻木頼黄
           設計主任 大熊喜邦
              〃   武田五一
(2) 工事請負
  京都市 大岩組(代表 大岩徳次郎)
  内基礎工事 安藤金次郎

由来及び沿革

 山口県は当初、藩政時代の建物を県庁舎として使用していたが、県庁機構の拡大による狭隘化と建物の老朽化を理由に、明治44年11月からの県会において県庁舎及び議事堂の新築計画案が提案され、明治45年度より4か年計画、総工費47万余円で可決された。設計は当時国会議事堂の建設準備を進めていた大蔵省臨時建築部に依頼され、妻木頼黄部長のもとで、武田五一、大熊喜邦の2人が担当した。工事は大正2年4月から始められ、大正4年9月に上棟式が行われ、竣工は大正5年7月、落成式は同年11月であった。
 旧県庁舎は南面する煉瓦造2階建で、玄関ポーチ及びその上のバルコニー廻りや腰壁、窓台など要所を花崗岩とする他は表面モルタル塗とし、横目地を入れて石造風に見せる。
 床組と小屋組は木造であるが、一部鉄骨梁を用いる。屋根は正面中央部を寄棟造、各隅を宝形造とし、要所にドーマーウィンドウを設ける。主要部分は天然スレート葺(現行は銅滓瓦葺)で、中庭側に面する廊下屋根のみ略式の亜鉛引鉄板葺となる。平面は口字形で、正面棟の中央前面に車寄、玄関を張出し、背面中庭側に2階を正庁にあてた突出部を設ける。正面棟中央の階段室は1、2階とも中心部を広間とし、その両脇に列柱を隔てて階段部分を配した形となっている。一階には警察部長室、食堂、新聞記者室などの他、土木課、会計課などの一般執務室を置き、2階には正庁、知事室、内務部長室など主要室の他、学務課、勧業課などの一般執務室を設ける。一般執務室や廊下などは壁、天井とも漆喰塗の簡素な造りとするが、知事室、内務部長室などは木製腰壁を回し天井は木製格縁で幾何学模様をつくり、漆喰造出しの中心飾りからシャンデリアを下げるなど、各室ともそれぞれ異なった意匠で飾る。また中央階段室、正庁は壁、天井とも漆喰塗とするが、柱や柱形には柱頭飾りを付し、天井廻りにはモールデングを巡らせるとともにコンソールやデンティルで飾る。
 旧県会議事堂は旧県庁舎の東に南面して並置されている。当初は木造平家建の廊下で結ばれていたが、現在は失われている。建物は煉瓦造2階建で、県庁舎と同じく要所に花崗岩を用いる他は、横目地を入れたモルタル塗となる。床組と小屋組は木造で、議場の小屋組のみ鉄骨トラス構造として吹抜けの大架構を支える。屋根は正面中央を1段高い寄棟造とし、その上に頂部をドームとした方形平面の塔屋をのせる。要所にドーマーウィンドウを設け、本来の天然スレート葺を現在は銅滓瓦葺としている。平面は横長の正面棟の中央前面に車寄を突出させ、背面に議場を張り出して配置する。正面棟1階には議員控室、公衆控室、新聞記者席などをとり、2階には議長・副議長室、知事室、参事会室などを置く。議場は一階南側中央壇上に議長席と演壇を設け、左右に説明員席、その前方に扇形に議員席を配する。2階は周囲三方を新聞記者席、公衆傍聴席のギャラリーとし、中央は吹抜けとなっている。
 山口県旧県庁舎及び県会議事堂は、大正初期の煉瓦造公共建築として数少ない遺構であり、県庁舎と議事堂が一体となって保存されている点でも貴重である。設計は当代を代表する建築家である武田五一、大熊喜邦の2人が担当し、これに妻木頼黄、矢橋賢吉らが関与するなど、明治期以後の近代建築の展開を考える上で極めて重要な建築といえる。また意匠は正面車寄の独立石柱の意匠などにみられるように、各所に東洋建築の形をセセッション風にアレンジして取り入れるなど、明治期以来熟成した様式建築を基礎としつつ、大正時代に入ってあらわれた新しい意匠傾向が窺われる。
 なお、旧議事堂は既に議会資料館として再利用されているが、旧県庁舎についても今後、県政資料館として利用する計画であり、その保存活用を考慮して意匠的にすぐれた玄関及び中央階段室、2階の主要室以外の内装は指定より除く。

構造及び形式

(1) 旧県庁舎 煉瓦造、建築面積2,395.5平方メートル、2階建、正面玄関ポーチ付、桟瓦及び鉄板葺(玄関、中央階段室、南棟2階各室及び正庁以外の内装を除く。)
 附 棟札 1枚
   大正4年乙卯9月24日上棟の記がある
(2) 旧県会議事堂 煉瓦造、建築面積708.0平方メートル、2階建、正面玄関ポーチ付、桟瓦葺、正面中央塔屋付、銅板葺
 附 工事関係記録 6冊
   明治44年県庁舎改築之件
   自明治45年
   至大正6年 県庁舎建築往復1件 附復命書 其の1
   県庁舎建築ニ関スル往復1件 其の2
   大正2年度県庁舎建築1件 敷地構造ニ属スル分
   大正2年県庁舎建築1件 地形ニ属スル分
   大正2年県庁舎建築ニ関スル木材1件
   設計図 5枚
以下(1)旧県庁舎と(2)旧県会議事堂に共通
ア 基礎  コンクリート打
イ 外装  玄関回りは根石、窓台は花崗岩の組石造、他は山形金網入煉瓦造で外部はモルタル塗
ウ 内装  漆喰壁、ペンキ仕上げ、壁紙、張石、木造、雑作
エ 内部雑作及び階段
      玄関内は槻木、他は檜材、松材のワニス塗仕上げ、旧本庁舎は濃茶色、旧議事堂は黒色
オ 小屋組 木造、鉄骨トラス(旧議事堂)
カ 床   主要な室は寄木張、他は拭板張、廊下等はリノリューム張り、叩き床はモルタル塗及び人造石塗仕上げ
キ 天井  漆喰、主要な室は漆喰及び檜材を使用
ク 屋根  銅滓瓦葺及び亜鉛メッキ鉄板葺、錺工事は棟飾及び谷板は銅板
ケ 軒高  本館10.06m、旧議事堂9.67m

参考情報

(1) 建築様式と建築的表現等
ア 後期ルネサンス様式を基調とする。細部意匠に日本及び東洋趣味をもって独創的なデザインがなされている洋風建築で、石と煉瓦、モルタルを使用し、建物内部の広いホール、天井のデザイン、正面玄関のバルコニーなどに特色が見られる。
イ 大正時代の洋風建築としては代表的な作品であり、古典建築の重厚さから脱け出した一種の軽やかさとのびやかさをもつのが特色で、セセッション風な表現をとっている。
ウ 旧本庁舎、旧議事堂とも一段と高くなった中央上部の屋根と建物中央の玄関を中心とした中心尊重主義をとりながら左右に翼廊を張り出し、左右対称、相似を尊び水平線を強調して明確な輪郭線を画き全体の安定と威厳、優美さを強調している。
エ 平面配置については、旧本庁舎は中庭を囲んだ□型プラン、旧議事堂は横長プランでいずれも南を正面としている。
  なお、庁舎建造物として旧本庁舎と旧議事堂が一体となって残存するものとしては、日本最古の建造物であり、希少価値がある。
(2) 保存利用計画
ア 旧本庁舎は、県民が県政の理解を深めるための県政資料館として利用する。この場合新庁舎及び県庁周辺の各種文化施設との重複を避け、機能的には特別展示室、県政資料展示室、県民談話室、会議室などを主として配置し、広く県民に親しまれるものとする。また、旧議事堂は、現状どおり議会の働きと歴史を紹介した議会資料館として引き続いて利用する。
イ 旧本庁舎の展示室配置計画は、文化的価値の高い部分の内装と展示物が同時に観賞できる方法として、正面側の1、2階(東端部を含む。)に特別展示室、県政資料展示室を集中させ、その他の部分に会議室等を配置する計画とする。
 特に建物保存上最も価値の高い部分である知事室、副知事室、正庁会議室は現況のまま存置し、歴代知事、副知事の写真のみ展示する。

地図

画像

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