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文化財の概要

文化財名称

木造二天王立像

文化財名称(よみがな)

もくぞうにてんのうりゅうぞう

市町

柳井市

指定


区分

有形文化財

時代

鎌倉時代

一般向け説明

 柳井市福楽寺に蔵する。福楽寺には二天が三組蔵されていて、その内旧下野寺(しものでら)薬師堂の二天と、旧下野寺本堂にあった二天の二組4躯が、本件である。旧薬師堂の二天は共にヒノキ材の寄木造り、阿形(あぎょう)は像高101.3cm、吽形(うんぎょう)は像高97cm。共に足ほぞに銘があり、永仁2年(1294)に仏師正智坊が作ったとわかる。旧下野寺本堂の二天は、共にヒノキ材の寄木造り、阿形は像高104.5cm、吽形は106cmである。これも足ほぞに銘があり、薬師堂二天と同じく、永仁2年、仏師正智坊とある。各像の姿態も着衣も彫りが深くまとまりが良い。

小学生向け説明

 柳井市の福楽寺にあります。福楽寺には二天王が三組あり、それがみな県有形文化財指定です。そのうち旧下野寺薬師堂の二天王と、旧下野寺本堂の二天の二組四体が、一緒に県指定となっています。
 旧下野寺薬師堂の二天王は、ともにヒノキを材とした寄木造りです。阿形(あぎょう)は像の高さ101cm、吽形(うんぎょう)は像の高さ97cm。ともに銘文(めいぶん)があり、鎌倉時代の1294年に仏師(ぶつし=仏像をおもにつくる職人のこと)正智坊が作ったとわかります。
 旧下野寺本堂の二天王は、ともにヒノキを材とした寄木造りです。像の高さは、阿形が105cm、吽形が106cmです。薬師堂二天王と同じ銘文があります。

文化財要録

要録名称

木造二天王立像

指定区分・種類

彫刻

指定年月日

昭和56年12月11日(山口県教育委員会告示 第5号)

所在地

柳井市余田1112番地

所有者

宗教法人 福楽寺

制作等の年代又は時代

応仁2年(1294)

員数

四躯

製作者

A、Bは正智房 
C,Dは性(正)智房、円行房

品質及び形状

【形状・品質・構造】
(1)旧下野寺薬師堂二天 1対
A 阿形
○形状
 垂髻。天冠台を戴く回天冠台上正面に花冠をつける。彫眼。眉をよせ、大きく眼を見開き、開口して上・下歯舌をあらわす。着甲。右手はわすかに臂を屈し、服前に出す。左手は肩と水平にあげ、臂を屈してほぼ直角に振りあげて、拳を握って持物を執る形。腰を右に捻り、左足を前に踏み出し、右足に体重をかけて立つ。左右の鰭袖の先を括る(左袖先欠失)。胸に布帯をめぐらす。腹前に獅噛をつけ、手甲、籠手をつけ、脛当をつけて沓をはく。天衣は下腹前をめぐり、一度帯をくぐって両側に垂らす(垂下部欠失)。
○品質・構造
 ヒノキ材の寄木造。頭部は耳後で前後に割り、内刳りを施し、首ほぞで体部に差込む。左後頭部の一部に補材(後補)。右耳の一部わずかに欠失。体部は主幹部を両足ほぞを含めて竪一材から彫出し、背面襟下から裾までを大きく前後に割り、内刳りを施し矧付ける。右手は肩から手首までを一材から彫出し肩で体に矧ぎよせる。手首から先、掌の内側にかけて欠失。右袖中央から先矧付け(矧付部欠失)。左手は肩から手首先、掌部まで含めて一材から彫出し肩で体に矧ぎ寄せる(掌の内側欠失)。両足先別材矧付け(矧付部欠先)。股間の裳に鼠害と思われる穴がある。
B 吽形
○形状
 垂髻。天冠台を戴く回天冠台上正面に花冠をつける。彫眼。眉をよせ眼をいからせ、口を結ぶ。着甲。右手はわずかに臂を屈して体側に張り出し、拳を握り持物を執る形。左手は臂を張って屈し、拳を握って腰にある。腰を左に捻り、右足を前に出し、左足に重心をかけて立つ。左右に飜る鰭袖の先は括らない。頸に領布を結び、腹前に獅噛をつける。手甲、籠手、脛当をつけ沓をはく。天衣は腹下前をめぐり、一度帯をくぐって両側に垂らす(垂下部欠失)。
○品質・構造
 ヒノキ材の寄木造。頭体部の主幹部を足柄まで竪一材から彫出する。頭部は耳の後ろで割り矧ぎとし、内刳りを施す(矧付の後頭部欠失)。体部は襟下から裾までを割り、内刳りして背板を矧寄せる。背板の腰下に四角の穴をうがつ。両手とも肩から拳までを一材で彫出し、袖先は別材を矧付ける(両手とも指先欠失)。両足先矧付け(矧付部欠失)。
(2)旧下野寺本堂二天 1対
C 阿形
○形状
 垂髻。天冠台を戴き、台上正面に花冠をつける。台下の地髪、まばら彫り。彫眼。大きく眼を見開き、口をわずかに開く。着甲。右手はわずかに臂を屈し、体側に張り出して垂下し、左手は臂を屈し斜め左前に立て、持物を捧げる形(両手首から先欠失)。腰を左に捻り、右足を前に出して左足に体重をかけて立つ。左右の鰭袖の先は括らない。腹前に獅噛をつける。籠手、脛当をつけて沓をはく。天衣は下腹前をめぐり、一度帯をくぐって両側に垂らす(垂下部欠失)。
○品質・構造
 ヒノキ材の寄木造。頭部は後頭部で前後に割矧ぎ、内刳りを施す。垂髻及び花冠の正面両側の菊花形飾は彫出。首ほぞで体内に差込む。体部は側面で前後に矧ぎ、内刳りを施す。右手は肩から手首までを一材から彫出し、肩で矧寄せる。手首から先は別材矧付け(欠失)。左手も同様、肩から手首までを一材から彫出し、肩で矧寄せる。手首から先、別材矧付け(欠失)。左手も同様、肩から手首までを一材から彫刻し、肩で矧寄せる。両袖とも先端の一部を別材矧付け(欠失)。両足先矧付け(欠失)。
D 吽形
○形状
 垂髻。天冠台を戴き、台上正面に花冠をつける。台下の地髪まばら彫り。彫眼。大きく眼を見開き、口を堅く閉じる。着甲。右手はわずかに臂を屈し、体側に張り出して垂下し、左手は臂を屈して斜左上に振り上げ、拳を握り持物を執る形。腰を左に捻り、右足をわずかに上げて前に出し、体重を右足にかけて立つ。左右の鰭袖の先は括らない。腹前に獅噛をつけ、脛当をつけ沓をはく。天衣は下腹部をめぐり、帯をくぐって両側に垂らす(垂下部欠失)。
○品質・構造
 ヒノキ材の寄木造。頭部は後頭部で割り、内刳りを施して矧付ける。体部は背面襟下で前後に割り、内刳りして矧付ける。右手は肩と手首で矧ぐ(手首先欠失)。左手は肩から拳までを一材から彫出し、肩で矧付ける(拳の指部欠失)。両足先別材矧付け(矧付部欠失)。右袖先矧付け(矧付部の先端一部欠失)。左袖先矧付け(矧付部欠失)。右裾先一部欠失。

寸法又は法量

単位㎝
         A/B/C/D
像高      101.3/97.0/104.5/106.0
頂上~顎   23.5/22.7/22.6/23.7
面長      11.4/11.5/10.6/11.6
面幅      11.0/11.2/10.8/10.6
面奥      13.8/13.3/13.4/14.3
胸奥      18.3/17.5/17.9/17.0
腹奥      19.0/20.5/20.1/20.8
臂張      49.1/44.2/37.4/41.1
裾張      22.0/34.0/25.6/※22.9
足先開き   27.2/26.7/24.8/※23.2
ほぞ高    7.7/8.5/4.8/5.4
ほぞの奥行 7.0/7.5/6.5/5.2
ほぞ幅    2.4/3.0/1.9/2.4
 注)※は現存の法量

銘文

A)右足ほぞ
○前面
不詳
○外側面
建立二天〔  〕、下野寺薬師堂、□
門建立如件、□(大カ)佛師正智房、〔  〕(阿闍カ)梨大願主。
○踵側面
快賢
B)左足ほぞ
○内側面
奉建立二天、下野寺薬師堂、□(奉カ)建立如件、□(大カ)佛子正智房、大願主阿闍梨、快賢。
○前面
〔    〕(永仁二年カ)甲午九月五日
C)右足ほぞ
○内側面
大願主、阿闍梨快賢、〔   〕、〔   〕、〔   〕。
○外側面
永〔   〕、歳次〔   〕。
左足ほぞ
○内側面
〔  〕下野寺、本堂二天、奉建立、佛師性智□(房カ)、円行房。
D)右足ほぞ
○内側面
〔  〕、〔  〕生也。
○外側面
永仁二年、歳次甲午。
左足ほぞ
○内側面
〔  〕下野寺、本堂二天、奉建立。
○前面
小佛子円行房
○外側面
大願主阿闍梨、快賢。

地図

画像

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