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文化財の概要

文化財名称

法光寺阿弥陀堂の仏像

文化財名称(よみがな)

ほうこうじあみだどうのぶつぞう

市町

山口市

指定


区分

有形文化財

時代

鎌倉時代

一般向け説明

 山口市徳地法光寺の阿弥陀堂に安置の次の5体の仏像が山口県指定有形文化財となっている。

(1)木造阿弥陀如来坐像。像高は128.7cm。ヒノキ材、頭、体部を両ひじまでふくめて竪一材から彫りだしている。下ぶくれの円相、やわらかな衣紋、一木造りの伝統の古式の木寄せなど、平安時代後期の特徴が各所に見られるが、がっしりした肩の張り、堂々とした体躯は豪快な作風がみられる。納衣の衣紋は簡略であるが、彫りは力強く、鎌倉時代初期、12世紀末の作と見られる。台座も光背も当初のものが残り貴重である。

(2)木造菩薩形立像。像高は142.2cm。ヒノキ材の一木造り、右手はまげて胸もとにあげ、手の平を前にして指をたてる。左手は体にそって下げ、ひじをわずかにまげて前に出し、腹下で持物をにぎる形。きびしさのある面相、張りのある体躯には鎌倉時代の作風が見られる。

(3)木造十一面観音立像。像高は130.2cm。ヒノキ材の一木造りで、内ぐりはない。彫法は簡略で、衣紋の彫出しを略したところもある。全体に素朴な地方作である。他の像より少し後になる鎌倉時代中期、13世紀中頃の作であろう。

(4)木造不動明王立像。像高は187cm。頭、体部をヒノキの一材から彫り出している。左眼を半眼とする天地眼(てんちがん)で、口の両端に牙を見せる。右手はまげて手首を腰にあて剣を持つ。左手は垂らして羂索(けんさく)を持つ形である。動きは少ないが、堂々とした体躯を有し鎌倉時代の作である。12世紀末頃の作である。

(5)木造毘沙門天立像。像高は188.5cm。ヒノキ材の一木造りで内ぐりはない。量感が全体にみなぎり、力をうちに秘めている。衣紋の彫りもするどいものが見られる。張りのある面相、がっしりした体躯など鎌倉時代の特色がでている。

 以上5体の仏像を安置する阿弥陀堂は、1186年(文治2)に奈良東大寺再興のためこの地に下向した俊乗坊重源が建立した安養寺の遺構である。その規模は縮少されているが、建立当初のようすがうかがわれる。5体の仏像の内、十一面観音像は制作年代を異にする(13世紀)が、他の4体は当堂建立の時に制作されたものと考えられる。特に本尊の阿弥陀如来坐像は優作である。

小学生向け説明

 山口市徳地にある法光寺の阿弥陀堂に安置されています。各仏像別に説明します。

(1)木造阿弥陀如来坐像。像の高さは129cm。ヒノキを材とした鎌倉時代初期の作。台座も光背(こうはい)も当初のものが残っており、貴重です。

(2)木造菩薩形立像。像の高さは142cm。ヒノキを材とした一木造りで、鎌倉時代の作風が見られます。

(3)木造十一面観音立像。像の高さは105cm。ヒノキを材とした一木造りです。全体に素朴な地方作です。鎌倉時代中ごろにつくられたものかとおもわれます。

(4)木造不動明王立像。像の高さは187cm。頭、体部をヒノキの一材から彫り出しています。

(5)木造毘沙門天立像。像の高さは189cm。ヒノキを材とした一木造りです。鎌倉時代の特色がでています。

 以上5体の仏像を安置する阿弥陀堂は、1186年に奈良東大寺を建てなおすためこの地に来た俊乗坊重源(しゅんじょうぼうちょうげん)が、建立(こんりゅう)した安養寺の遺構です。その規模は縮少されていますが、建立当初のようすがうかがわれます。

文化財要録

要録名称

法光寺阿弥陀堂の仏像  
 木造阿弥陀如来坐像 一躯
 木造菩薩形立像 一躯
 木造十一面観音菩薩立像 一躯
 木造不動明王立像 一躯
 木造毘沙門天立像 一躯

指定区分・種類

彫刻

指定年月日

昭和61年10月24日(山口県教育委員告示 第7号)

所在地

山口市徳地鯖河内1444番地

所有者

宗教法人 法光寺

制作等の年代又は時代

藤原末~鎌倉初(12世紀)
 ただし、十一面観音菩薩立像は鎌倉時代(13世紀)

員数

五躯

品質及び形状

【形状・品質・構造・法量】
(1)木造阿弥陀如来坐像
〈形状〉
 本体…螺髪切子型、後頭部まで丁寧に彫出。肉髻珠をあらわさず。白毫相をあらわす。耳朶は環にし、三道を刻む。衲衣は左肩を蔽い、右肩に少し懸る。右手臂を屈して前に出し、掌を前にして立て第1・2指を捻じる。左手は臂を屈して左膝上に置き、掌を仰いで指を伸ばし、第1・2指を捻じる(上品下生印)。右足を外にして結跏趺坐する。
 台座…五重蓮華座。蓮肉(蓮弁は全て逸失)。反花(平型八葉間弁付)。敷茄子(円形)。上框座(八角形)。下框座(八角形)。
 光背…舟形拳身光。
〈品質・構造〉
 本体…ヒノキ材。頭・体部を両臂まで含め竪一材から彫出し、背面襟下から地付まで長方形に割矧ぎにして、内刳りを施す。背面は4ヶ所で釘で留める。頭部は内刳りをしない。彫眼。右手は臂・手首で矧ぐ。左手は袖口を別材とし、手首を挿込む。膝前は横一材から彫出し、裏側地付部は大きく縁をのこして刳り、体部に寄せる。底板はない。
 白毫は水晶を嵌入したと思われるが、今は逸失し、彫り込み穴のみ残る。右手の第1・2・5指欠失、第3・4指先欠失。左手袖口部欠失、第1・2・3・4指先欠失。裳先欠失。
 彩色は螺髪に群青彩、鼻腔・口唇に朱彩、眼に白土彩をして瞳を墨描する。肉身部・衲衣ともに漆箔を施す。
 台座…ヒノキ材。蓮肉は横一材から丸彫りし、中央部を三角形に刳り、中央に円穴をうがつ。上面後部に光背を立てるほぞ穴が2つある。蓮弁はすべて逸失。間弁付反花は一弁毎に横木8材で造り、八角形に寄せる。敷茄子は横一材を円形に丸彫りし、中央に円穴をうがつ。上框座は横一材で八角形に丸彫りし、中央に円穴をうがつ。下框座は横二材を矧ぎ、八角形二段に彫る。上面中央に円穴をうがつ。
 彩色は蓮肉の底、敷茄子の上面などに彩色が残るが、ほとんど剥落して素木に近い。
 光背…ヒノキ材。竪板二材をほぼ中央で矧ぐ。左側は頭光・身光に沿って周縁部が大きく段状に欠ける。上方に頭光(光心の周りに八葉、さらにその外周に花菱文をめぐらす)・身光(花菱文)を描き、周縁には唐草文を描いた上に梵字(籠字に線刻し朱を入れ墨書したと思われる)を配する。現状で右側に梵字5字を認める(梵字の判読は肉眼では難しい)。光脚欠失。
〈法量〉単位:㎝
本体 像高/128.7
    髪際下/109
    頂上~顎/41.3
    面長/20.6
    面幅/24.4
    耳張り/30.2
    面奥/31.7
    胸奥/33.2
    腹奥/37
    臂張り/71
    膝張り/94.8
    膝高/18.3
    膝奥/70
背板 高/92.5
    幅/45.3
台座 総高/58
    蓮肉径/92.5
    蓮肉高/29
    反花径/115
    反花高/9
    反花幅/14.5
    敷茄子径/49.6
    敷茄子高/4.5
    上框座幅/94
    上框座高/7.5
    下框座横/145.5
    下框座縦/126
    下框座高/11
光背 総高/201.5
    厚/1.5
    頭光径/67
    身光径/81
(2)木造菩薩形立像
〈形状〉
 本体…垂髪(五筋に分れる)。天冠台下の地髪は平髪。白毫相をあらわす。三道を刻まず。右手は屈臂して胸もとに挙げ、掌を前にしてやや外側に傾けて立てる。左手は体に沿って垂下し、臂を僅かに屈げて前に出し、腹下で持物を握る形。条帛を左肩から右脇下を通って着け、天衣は両肩を蔽って垂下し、膝の上・下をめぐり両腕に懸る(懸るところから先は欠失)。裳(二段折返し)を着け、両足先を自然に開き、足ほぞで蓮台上に立つ。
 台座…蓮華座。蓮肉(蓮弁はすべて欠失)。反花(平形の八弁)。上框座・下框座ともに八角形。
〈品質・構造〉
 本体…ヒノキ材。頭・体の幹部を両腕の臂まで、両足の足ほぞまでを含め竪一材から彫出。背部を襟下から膝の裏側あたりまでを割矧ぎにし、体部をほぼ長四角形に内刳りを施す。両臂から先は別材を矧ぎ付ける(後補)。両腕ともに上膊部に小材を補う(左手の方は欠失)。背板の左下方一部欠失。右手の五指とも指先は欠失。両足先欠失。
 彩色は髻・頭髪ともに漆下地に群青彩。口唇に朱彩。全体に漆下地に金箔を押す。胸に瓔珞を墨描する。
 台座…ヒノキ材。蓮肉一材から丸彫りし、上面後部に光背を立てるためと思われる四角形の小ほぞ穴2つがある。光背は欠失。反花・上框座・下框座それぞれ一材から彫出。彩色は剥落。
〈法量〉単位:㎝
本体…像高/142.2
    髪際下/125
    頂上~顎/31.3
    面長/14.6
    面幅/15
    耳張り/17.4
    面奥/18.9
    肩張り/34.4
    臂張り(現状)/35.6
    腹奥/20
    裾張り/28.1
    胸奥/18.7
    左足ほぞ横/4.9
    左足ほぞ縦/6.7
    同幅/2.1
台座…総高/26.4
    蓮肉径/34.2
    蓮肉高/11
    反花径/28.6
    反花高/8.3
    上框座幅/37.5
    上框座高/2.8
    下框座幅/49.7
    下框座高/4.6
(3)木造十一面観音菩薩立像
〈形状〉
 髻は粗く概形をつくる。髻頂の仏面は欠失。天冠台上に十面を一列に配す。天冠台下の地髪は平彫りとし、鬢髪は両耳を亘る。白毫相をあらわす。三道を刻む。右手は体に沿って垂らし、左手は臂を屈げる。条帛を左肩から右脇下をめぐって着ける(背面は刻まず)。天衣を両肩を蔽って垂下し、膝の上・下辺をめぐって両腕に懸ける(懸けた先は欠失)。裳(三段折返し)を着け、両足を自然に開き、足先を揃えて蓮台上に立つ。
〈品質・構造〉
 ヒノキ材。頭・体の幹部を竪一材から彫出し、内刳りは施さない。白毫は木製嵌入。両腕とも肩のほぼ中央から内側は本体と共木で彫出し、外側は別材を矧ぎ付ける。右手は下膊部から先欠失。左手は臂から先欠失。裾まわり及び両足先を別材で後補。像底中央に穴をうがち芯棒を差込み、その芯棒を蓮台上のほぞ穴にさし込んで立つ。蓮台は後補。
 彩色は漆箔の上にベンガラ彩を施す(後補)。
(4)木造不動明王立像
〈形状〉
 頭頂に開蓮を戴く。頭髪は前面を巻髪にし、小花冠を置き幅広い金冠を着ける。金冠は両耳の上で花結びとする。後頭部は八束の総髪とする。左耳前で縄をなった形の弁髪を肩に垂らす。左眼を半眼とする。いわゆる天地眼とし、耳朶は鐶に、三道を刻む。利牙を左右の両口端でそれぞれ上・下方に表わす。条帛を左肩から右脇下を通って懸け、裳(二段折返し、背後は一段目をはね上げる)を着ける。右手は屈臂して手首を腰に当て宝剣を執る。左手は体に沿って下げ、羂索を提げる形。腰をやや右に捻って左足に重心をかけ火焔光を負って岩座上に立つ。
〈品質・構造〉
 ヒノキ材。頭・体の幹部を竪一材から彫出し、背面襟下から裳裾に懸けて割り、内刳りを施して背板を刳ぐ。右手は肩・手首で矧ぎ付ける。左手の拳の一部は欠失。羂索は逸失。右足先の指は欠失。左足先は甲から先が欠失。
 彩色は頭頂の開蓮朱彩。顔・肉身は白土下地の上に漆をかけ、さらにベンガラ彩を施す(後補)。口唇は朱彩。条帛・裳には白土下地の上に黒漆をかけている。折返しのところには朱彩の跡がある。
 光背は檜材の舟形板光背で、左側の半分は欠失している。表面に火焔を描く、岩座は後補。
〈法量〉単位:㎝
本体…総高/187
     像高/159
     髪際下/148.5
     頂上~顎/27.2
     面長/15
     面幅/15
     耳張り/19.6
     面奥/22
     臂張り/62.5
     胸奥/24.5
     腹奥/27
     裾張り/27
光背…幅(中央)/33.5
     幅(底部)/10.5
     高/200.3
     厚/1.3
(5)木造毘沙門天立像
〈形状〉
 重髻(五筋に分かれる)。天冠台下の地髪は前方はマバラ彫りとし、その他は平髪。眉を寄せて瞋目し、口を「へ」の字に結ぶ。肩甲、胸甲、腹甲を着ける。裾廻りに花弁飾りを垂れる。鰭袖の下に大袖をつけ、その先を結ぶ。籠手を着ける。天衣は下腹前をわたる。左手は臂を屈げ、斜め前方に上げる。右手は臂をわずかに屈げ、腰脇に下げる。腰をやや左に捻り、重心を左足にかけ、右足は少し前に出して遊ばせる。両足下に夜叉の背を踏んで立つ。裳の裾を前に小さく、後に大きく垂れ、袴をはき脛甲を着け沓をはく。
 夜叉は頭を左にし、顔をほぼ正面に向けて口をつむぎ、うずくまる形で岩座上に伏す。
〈品質・構造〉
 ヒノキ材。頭・体の幹部を足ほぞまで竪一材から彫出し、内刳りを施さない。両腕はそれぞれ袖を含めて一材から彫出し、肩で矧ぎ付ける。ただし両手首から先は別材を矧ぐ形だが、手首から先は欠失。右袖のくくり目から先も欠失。夜叉及び岩座は檜の横一材から丸彫りする。太い丸刀の彫りあとを残しているが、後補である。
 彩色は髻・頭髪・眉を墨彩、顔面は白土下地に肉色彩を施し、口唇に朱彩。肩甲、胸甲、腹甲、籠手、脛甲等には漆箔の跡が残る。袖は白土下地に淡緑彩を施し、その上に宝相唐草文様を墨描し、裳裾などには亀甲文様の墨描が見られる。その他随所に彩色の跡が認められるが剥落が甚しい。
〈法量〉単位:㎝
本体…総高/188.5
    像高/164
    髪際下/145.5
    頂上~顎/34.8
    面長/15.4
    面幅/16.2
    耳張り/20.9
    面奥/22
    臂張り/64.7
    胸奥/27
    腹奥/28.3
    裾張り/45.2       
    足先開き/35.9
    右足ほぞ高/11.3
    右足ほぞ奥/17.5
    右足ほぞ前幅/5.9
    右足ほぞ後幅/2.3
夜叉…像高(臀部)/19.5
    面長/18.4
    面幅/22.4
    体長/74.3
    後肢幅/48
    岩座高(最大)/8
    岩座横幅/76
    岩座奥(右)/49
    岩座奥(左)/56.9

地図

画像

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