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文化財の概要

文化財名称

三作神楽

文化財名称(よみがな)

みつくりかぐら

市町

周南市

指定


区分

重要民俗文化財

一般向け説明

 7年目毎の11月21・22・23日の3日間、河内社境内で行われる神楽舞い。およそ300年前、仁保津(周南市)の栗木にある蛇つなぎという所で、7荷半(一人で担げる荷物の7倍半)もある大ウナギが取れた。あまり大きいので、仁保津・赤山(周南市)、鯖河内・上角(山口市徳地)、巣山・升谷・三作(周南市)の7つの地区に分けた。ところが、神の祟りによって疫病が流行し、困り果てた村人は、各地区の代表を集めて、7年目毎に、神楽を奉納することにした。それが、この神楽舞いの始まりであると伝えられている。7つの神社から神を迎えて「神舞い」を始め、舞いの最中も神職は、それを守り、神迎えをした7社の舞いの時には、祝詞を奏し、神事としての神楽舞いの味わいと古いしきたりを十分に伝えているものであると言われている。
 国により記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として選択されている。

小学生向け説明

 7年目毎の11月21・22・23日の3日間、河内社境内で行われる神楽舞いです。およそ 300年前、捕まえた大ウナギを三作などの7つの地区に分けたところ、神の祟りによって疫病が流行し、困り果てた村人は、各地区の代表を集めて、7年目毎に、神楽を奉納することにしたのが、この神楽舞いの始まりと伝えられています。7つの神社から神を迎えて「神舞い」を始め、舞いの最中も神官は、それを守り、神迎えをした7社の舞いの時には、祝詞を奏するなど、神事としての神楽舞いの味わいと古いしきたりを十分に伝えていると言われています。
 国により記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財として選択されています。 

文化財要録

要録名称

三作神楽

指定区分・種類

重要無形民俗文化財

指定年月日

平成12年12月15日

昭和62年(1987)10月27日 (山口県教育委員会告示第6号)

保持者

名称 三作神楽保存会

時期及び場所

 7年目毎に11月21・22・23日の3日間(昭和56年の場合、7年祭は11月21日・22・23日に行い、同じく神楽舞は22日に行った。9時50分開始、18時終了。)
 新南陽市大字頁切原赤の河内社境内。

由来及び沿革

【技芸の由来又は沿革】
 今からおよそ300年前、周南市仁保津の栗木にある蛇つなぎという所で、7荷半もある大ウナギが取れ、余りに大きいので周南市仁保津・赤山、山口市徳地鯖河内・上角、周南市巣山・升谷・三作の7部落に分けた。ところが、神の祟りにより疫病が流行し、困り果てた村人は各部落の代表を集め、7年目ごとに神楽の奉納を行うようにしたという。

内容

(1)神楽の大要
 三作岩戸神楽舞は7年祭で、卯年、酉年の7年目ごとに河内社境内で行う。現在は11月21日、22日、23日に行われる。
 神楽は河内社境内での神殿掛けから始まり、餅付き、祭礼準備、出立、神殿清めと湯立神事を行い、河内社、大元社、大番社、氏社、小原部落の大番社、氏社、大元社の7社から神を迎え、神迎神事、神舞奉納、餅まき、神戻し、神殿破りとなっており、神を迎えて神舞を始め、舞の進行中も神職はそれを守り、神迎えを行った7社の舞の時には祝詞を奏し、神事としての神楽舞の実態を実感として味わうことができるとともに、神楽舞の古式を十分に伝えている。
 神殿は、間口3間半、奥行5間半の広さで、年祭ごとに河内社の境内に建てるが、用材は松と杉で古式によりわら縄で結び、屋根はわらごもで葺き、神殿の正面だけは壁面全体を榊でおおい、そこに神座を設け、四方の柱に神棚をつけ、天井には天蓋2個を飾り、神殿の周囲のシメ縄にも5色の切り飾りや神明を書いた紙をつけ、八百万の神を祀る。

(ア) 神殿掛け
 普通5日ぐらい前に行う。
 各家から木など持ち寄るが、普 通は必要なものは保管して、随 時補充する。
 コモは1軒1枚あて持参する。  (60数枚)
 1日かかる。30人役。
 
(イ) 神殿清め
 神殿の一角に斎竹4本を立て、注連縄を張り、湯釜を据える。神主2人で神楽歌を唱えながら、“湯おこし神事”,をする。榊の枝を湯にひたし、神殿、舞道具、舞子などを清めた後、清めの舞、恵比寿の舞、紫鬼神の舞の3曲を舞う。
神楽歌
○「火の神の育ちはどこぞ奥山の 飛び火が嶽こそ育ちなるらん」
○「御湯釜の育ちはどこぞ尾張なる たたらの浜こそ育ちなるらん」
○「湯の神の育ちはどこぞ天竺や 天の川原の白瀧の水」
(ウ) 道引き
 神殿に入るまでのシヤギリ(およそ100m)
(エ) 神迎え
 7社の神迎えを行う。神主3人が三方に分かれ、総代と舞道具を持った舞子3人ばかりを供にし、お迎えに上がる。
 7社は、氏社(林)・大番社(林)・大元社(原赤)・河内社(原赤)・大番社(小原)・大元社(小原)・氏社(小原)である。
 いわゆる八百万神の神迎えを意味する。
(オ) 神殿入り
 神殿前に着いた神迎えの行列は、入口にて引き受けの神に扮した神主と、神楽歌を唱えて門答する。
 鈴をチリンと鳴らし、問いかけの神楽歌につづいて、答えの歌を唱え、神殿を3周し、神迎えの御幣を神座に安置する。     ○「鳥居立つここも高天の原なれば 集まりたまえ四方の神々」
○「千早振る神の鳥居を通りては 万の穢れは消え失せにける」
○「天蓋の千道八千道多けれど 中なる道は神の通い路」 
○「伊勢の国ようだの宿に着く時は 神楽太鼓の音ぞ聞こゆる」
○「しめを引き御はけをおろし 清浄して舞えば戸開く神の社の」
○「人々を清むるものは神の御子 まえばの榊桃浦の汐」
(カ) 神舞
 神主・総代は神供をなし、一同着座し、修祓、祝詞奏上、玉串拝礼の神事の後、神舞が始まる。
 神殿奉行をおき、清めの舞いから始めて23の舞をし、花鎮めの舞で終わる。
 清めの舞・二つ弓の舞・河内社の神楽・二つの太刀の舞・恵比寿の舞・大元社の神楽・卓の舞・四つの太刀の舞・小原氏社の神楽・紫鬼神の舞・四つの弓の舞・殿様神楽・小原大番社の神楽・大番矛の舞・小原大元社の神楽・荒神の舞・氏社の神楽・王子の舞・大番社の神楽・三方荒神の舞・神明の舞・長刀の舞・花鎮めの舞の23座である。
(キ) 神戻し
 舞子全員が使用した舞道具を持ち、太鼓を中心に輪をかけ、舞道具で太鼓をたたきながら、「八百万神戻し」とくり返し唱えながら神殿を回る。いわゆる八百万神の神戻しを行う。
 また、使用した舞道具と巻縄とを、大番社(林)と大元社(原赤)とに鎮める。
(ク) 神殿とき
 神舞のあくる日、3部落総出により、神殿ときをし、使用した用材などはそれぞれ持ってきた者が持ち帰る。
 午前中で終わる。この日、次期総代を決める。
(2) 神楽舞の基本及び曲目
(ア)囃子
 神楽囃子に使用する楽器は、篠笛、太鼓、合せ鉦の3種類である。これらの楽器の奏法に関する資料はなく、昔からの聴き伝えで今日まで受継がれて来たものである。
(イ) 楽器と旋律
 合せ鉦は、太鼓と同じリズムである。
 これらの旋律・リズムを各舞(曲目)ごとに組み合わせ、舞に合せて、音の強弱、速さの巧みに組み入れ、くり返しくり返し演奏する。



(エ) 曲目
1. 清めの舞(2人)12分
 イヌガエリから四方を切る。ヒレイをする。すべて4回舞う。
2. 二つ弓の舞(2人)12分
 清めの舞と同じで最後にウチ合いをする。2人が向き合って同じ動作をしたのち、イヌガエリを舞う。(舞もどし) 
3 .河内社の神楽(2人)8分
 清めの舞と同じ。
4. 二つ太刀の舞(2人)15分
 イヌガエリから入り、トビヒレイを行い四方を切る。サヤギリを3 回行なって、元にもどってウタグラ、2人で座って拍手をうち、刀をいただく、ツジギリとウラギリを行い、さやをおいて太刀だけで前転して座り、イヌガエリで終わる。
5 .恵比寿の舞(1人)20分
 柴鬼人の舞、手力男命の出だしと同じ。鯛を釣りタイラカをし、それを4回行い、竿をおいて神楽で終わる。
6 .大元社の神楽(2人)8分
 清めの舞と同じ。
7 .卓の舞(4人)25分
 飛んで出て背中を合わし、中央に向きなおり、4人が交互に飛ぶ。あとは神楽と同じで飛んで終わる。(トビヒレイ)
8 . 四つ太刀の舞と同じで、ウラギリと前転はないが、ウチ合いがある。
9. 小原氏社の神楽(2人)8分
 清めの舞と同じ。
10. 柴鬼神の舞(2人)30分
 出だしは、恵比寿、太刀男命と同じ、あとは光をとり、大地を掘り、柴をとってこぎ、フセギが出て、フセギと問答をし、終りに神楽を舞う。
11. 四つ弓の舞(4人)15分
 基本は、二つ弓の舞と同じ。
12. 殿様神楽(1人)20分
 神楽の要素をすべてふくむ。
13. 小原大番社の神楽(2人)8分
 清めの舞と同じ。
14. 大番矛の舞(2人)20分
 神楽ののち、ウチ合いとタイラ
カをし、イヌガエリで終わる。  15. 小原大元社の神楽(2人)8分
 清めの舞と同じ。
16. 荒神の舞(地固め)(2人)25分
 卓の舞と同じで最後に一人神楽がある。   
17. 氏社の神楽(2人)8分
 清めの舞と同じ。
18. 王子の舞(7人)60分
 神楽で始まり、六郎、五郎、門宣、四神等と門答をする。
19. 大番社の神楽(2人)8分
 清めの舞と同じ。
20. 三方荒神の舞(3人)20分
 神楽を舞い、網を持ち、イヌガエリを行い、3人が順番に飛んで3本の縄を組む。そして順番に登って、逆さまに下りる。そしてイヌガエリで終わる。
21. 神明の舞(7人)60分
 天照大神が岩屋にこもる。四神が岩屋の前で舞う。手力男命が出て岩戸を開ける。天照大神が岩屋から出て終わる。
22. 長刀の舞(1人)15分
 ナギナタで四方を払い、中腰とひざをついて、腰ぐるまを行い、ゆびぐるま、うでぐるまで頭を切って終わる。
23. 花鎮めの舞(2人)30分
 2人で神楽を舞い、2人は天蓋を操作する。
 〔衣装及び用具〕
◎舞台の飾り
・天蓋2個
 ちなみ……奇数の9か11本。
 引き縄2本……最後の花鎮(め)の舞に使う。
・五行の旗(長さ半紙5枚続き)
 底立龍神・右白虎神・後玄武神・朱雀龍神・左青龍神 
・神殿五行の旗(長さ半紙3枚続き)
 中央 埴安大神 東方 句々廼馳大神
 西方 金山彦大神 南方 軻遇突智大神
 北方 罔象女大神
・切飾り
 四方に飾る。
・神殿
・巻き縄 2本(7巻半)
・のぼり綱 3本
 三方荒神の舞いに使う。(中はロ-プで周囲をサラシで巻く)
◎神楽舞
1.清めの舞 2人 (湯立を伴う)
 採物 榊2 錫杖2 握り幣2 釜1 しめ縄1 しで12 笹4
 衣装 風折鳥帽子2 赤狩衣2 袴(モスグリ-ン)2 足袋(白)2 白衣2
      (以下袴、足袋、白衣は全てに用いるので省略)
2.二の弓の舞 2人
 採物 弓2 錫杖2 握り幣2
 衣装 鳥帽子2 赤又は白の狩衣2
3.河内社の神楽 2人
 採物 握り幣2 錫杖2
 衣装 赤又は白の狩衣2 風折鳥帽子2
       (以下神楽舞は全てこれと同じ)
4.二つ太刀の舞 2人
 採物 太刀2 錫杖2 握り幣2
 衣装 斎襷(白)2 ハチマキ2(赤1・白1)
5.恵比寿の舞 1人
 採物 竿〔糸、針、鯛(紙製)〕1 扇子1 握り幣1 錫杖1 面(恵比寿)1
 衣装 赤狩衣1
6.大元社の神楽 2人
 (河内社の神楽と同じ。)
7.卓の舞 4人
 採物 卓1 徳利1 さかづき1
握り幣4 太刀2 矛2 三宝1 かるい幣4 錫杖4 
 衣装 斎襷(5色)4 ハチマキ4(赤2・白2)
8.四つ太刀の舞 4人
 採物 太刀4 錫杖4
 衣装 斎襷(白)4 ハチマキ4(赤
2・白2)
9.小原氏社の神楽 2人
 (河内社の神楽と同じ。)
10.柴鬼神の舞 2人
中心となる舞
 採物 鬼紙杖1 扇子1 榊1 握り幣1
 衣装 ちはや(錦織物)1 斎襷(白)1 面(柴鬼神)1 シャグマ1防ぎ 
 採物 太刀1 握り幣1 錫杖1
 衣装 白狩衣1 鳥帽子1
11.四つ弓の舞 4人
 採物 占4 握り幣4 錫杖4
 衣装 狩衣4(赤2・白2) 鳥帽子 4 
12.殿様神楽 1人
 採物 神楽と同じだが、扇子を加える。
 衣装 赤狩衣1 鳥帽子1
13.小原大番社の神楽 2人
 (河内社の神楽と同じ。)
14.大番矛の舞 2人
 採物 矛2 錫杖2 握り幣2 扇子1
 衣装 斎襷(5色)2 ハチマキ2
(赤1・白1)
15.小原大元社の神楽 2人
  (河内社の神楽と同じ。)
16.荒神の舞(地固め) 2人
 採物 矛1 太刀1 握り幣2 錫杖2 扇子1 かるい幣2
 衣装 斎襷(5色)2 ハチマキ2(赤1・白1)
17.氏社の神楽 2人
 (河内社の神楽と同じ。)
18.王子の舞 7人
 採物 太刀2 弓5 六郎杖1 六郎軍配1 錫杖5 握り幣5 笏1 鳥帽子6 かるい幣5 ひょうたん1 飾物1
19.大番社の神楽 2人
 (河内社の神楽と同じ。)
20.三方荒神の舞 3人
 採物 握り幣3 錫杖3 のぼり綱3
 衣装 斎襷(5色)3 ハチマキ(赤か白)3
21.神明の舞 7人
 採物 日光月光各1 榊1 笹1
三叉鉾1 御幣1 手力雄杖1 笏1 扇子4 錫杖1 握り幣1 天の岩戸1 卓1 しめ縄1 紙垂3
 衣装 鳥帽子3 立鳥帽子(金色)1 立鳥帽子1 赤狩衣2 白狩衣1 緑狩衣1 神主狩衣1 面5〔天照皇大神1、鈿女命1、太玉命1、石古理登売命1、手力男命1〕シャグマ1 肩切衣装2〔手力男命衣装1、手力男命衣装下着1〕
22.長刀の舞 1人
 採物 長刀1
 衣装 斎襷(白)1 ハチマキ(白)1
23.花鎮(め)の舞 2人
 採物 桜の枝(造花)2 錫杖2 天蓋2 引き縄2
 衣装 斎襷(5色)2 ハチマキ2
(赤1・白1)
◎楽器 
 太鼓1 笛3 合わせ鉦2
◎その他
 道引きの面1 石古理登売命の面1 袴(赤色)1 袴(子供用)1 鈴3 ヤハタ(八幡)1 六郎の面1 神楽面2 切り飾り12 千早1 手力男命衣装1 手力男命衣装下着1         

参考情報

資料(1) この神楽は明治22年から5年ごとに防府市野島の矢立神社の祭礼で、奉納を行っている。(昭和61年の場合、5月6日)
      野嶋御年祭記(明治22年、略)(友田直家所蔵文書)
資料(2) 遠内村年祭御神楽目録(寛政4年、略)(友田直家所蔵文書)
 〔助成〕昭和62年度 財団法人沖永文化振興財団(三作岩戸神楽衣装作成)
 〔公開〕昭和62年11月21日~23日 式年祭実地(11月15日神楽掛け、22日神殿舞
     昭和63年11月12日 「周防・三作神楽の夕べ(演劇博物館創立60周年記念)」(会場:東京都内早稲田大学大隈講堂 主宰:早稲田大学坪内博士記念演劇博物館・山口県新南陽市)
     平成元年10月21日 中国・四国ブロック民俗芸能大会(高知県夜須町公民館)
〔参考〕「周防野島の神舞拝観」(財前司一 「あるく・みる・きく」237号1986年)
    「三作岩戸神楽舞にみる自然崇拝について」(藤重豊 「山口県文化財」第18号 1988年)
    「三作岩戸神楽舞を見学して」(湯川洋司 「みんぞくの会通信」第8号 1988年)
    「周防・三作神楽の夕べ」(渡辺伸夫他 B5判12頁 1988年)
    「周防の神楽」(岩田勝 「まつり通信」303号)
    「山口県の荒神神楽~新南陽市三作岩戸神楽舞を中心として」 (「民俗芸能研究」第9号)
 

画像

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