蓋井島「山ノ神」の森
ふたおいじま「やまのかみ」のもり
下関市
国
重要民俗文化財
蓋井島には、集落の奥にゆるやかな谷に沿って原生林があり、その中に山奥から海岸に向かって、一の山~四の山と呼ばれる神聖な森がある。
この島の全39戸の家が4組みにわかれ、四つの神聖な森における神事を今に伝えている。
日頃はこの森に入ることは固く禁じられているが、「やま」の神に乞うて切り取った枯木や倒木を円錐状に組合せた神籬があり、その前に壺が掘りすえられている。森そのものに神霊や祖霊が宿るという古い信仰の形は、人工の「やま」以前の自然の「やま」の姿を伝えるものとして重要である。また、山ぎわには、この島の名の起源ともなった蓋でおおわれた神の井戸がある。
下関市の蓋井島には、神様の霊が森にやどるという古い信仰の形が残っており、日頃人が入ってはいけないとされる神様の森があります。その森は、一の森から四の森に分かれており、それぞれの森に神様がいるとされています。
そして今も、6年に一度のお祭りの時だけ、この島にある39戸(昭和35年)の家が4組にわかれ、四つの森に入り、神様を迎え感謝する行事を伝えています。
蓋井島「山ノ神」の森
重要有形民俗文化財
昭和35年10月11日(文化財保護委員会告示 第43号) 重要民俗資料
昭和50年10月1日(文化財保護法1部改正に伴う名称変更) 重要有形民俗文化財
四個所(三七八二㎡)
集落の北東方ゆるやかに開けた谷地に沿って、原生林に埋まった丘地があり、丘縁にはこの島の名の起源となったとされる蓋で覆われた神井がある。
丘には、奥から海岸に向って一の山・三の山・二の山の順に神聖な森がある。神聖な森は集落に近い「田の口」にもあって、四の山とよばれる。
「山」は「森」ともよばれ、元文4年の地下上申書に「四森」、「四山」とあって、古くから「森」と「山」が同義語として用いられたことを示している。
これらの森には、山の神に乞うて切り取った枯木や倒木を円錐状に組合わせた神籬があり、神籬の前には壺が堀りすえられている。
:奥山の榊の枝に白紙つけ木綿とりつけて斎瓮を忌ひ穿りすえ:
と、神祭の歌が万葉集巻三にあるが、壺を穿りすえた状態がこのような古代的な形で見出されることは注文に価しよう。上記地下上申書に「祭之内初穂壺に入候並魚一掛宛備申候」とあることをみると、壺には初穂を入れたものと考えられる。現在の壺は褐色の釉薬のかかったものであるが、須恵器を用いた時代のあったことが推測される。島の東岸には貴船神社があって、古老の記憶では須恵器が穿りすえられていたという。社祠は早くすたれたらしいが、この須恵器は現在蓋井八幡宮に所蔵されている。
二の山の壺は盗難にあったと伝えられ、現在は見られない。
筏石には、山に面した畑の中に朝鮮の造山(ちょうさん)を思わせる形式の堆石がある。この堆石が祖先の老夫婦の墓所と伝承されていることは興味深く、一の山が老夫、二の山が老婦、三の山が娘、四の山をその聟とする伝承が村人達に語りつがれていることは、この島では、山の神信仰と祖霊信仰と関係をもっていることを語っており、山神を老夫老婦とする信仰は朝鮮の山神信仰に共通している。
蓋井島の各山には、祭を世話する当元がそれぞれ世襲されている。一の山は藤永家・二の山は上野家・三の山は中村家・四の山は周防家である。
下関市 昭和38年2月7日(文化財保護委員会告示 第2号)
神事については記録作成等の措置を構ずべき無形の民俗文化財・蓋井島「山の神」神事の項参照。
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