護国寺笠塔婆
ごこくじかさとうば
防府市
県
有形文化財
鎌倉時代
防府市本橋町護国寺の境内にある。凝灰岩製で、基礎19cm、塔身50.5cm、笠16cm、露盤3.5cmからなり、当初のものとしてよく揃っている。上部にある受花宝珠は別のものである。受花宝珠を除く高さは89cm。平面は各部分とも長方形である。基礎正面は三区側面は二区に分けて、それぞれ線刻の月輪内に梵字「ア」を陰刻している。塔身は下方に連子と三巴文を交互にめぐらし、上部には蓮坐上に月輪を置き、弥陀三尊を平底彫りであらわす。背面は蓮座上に八葉蓮花を作り、胎蔵界の中台八葉院としている。その下方に銘文があり、貞永元年(1232)に刑部中子の供養の為に建立されたことがわかる。笠は寄棟造りになり、軒反りはゆるやかである。蓮華や梵字の形式、笠の反りなどすべてが鎌倉時代中期の手法がよくあらわれていて、小形ながら優秀な石造遺品ということができる。
防府市の護国寺の境内にあります。高さは89cmです。笠塔婆に刻まれた文字から、鎌倉時代の1232年に、刑部中子の供養の為に建立されたことがわかります。当時の彫刻手法がよくあらわれている石造物です。
護国寺笠塔婆 1基
建造物
昭和51年11月24日(山口県教育委員会告示 第6号)
防府市本橋町820番地
宗教法人 護国寺
貞永元年(1232)鎌倉時代
一基
【品質】 凝灰岩製
【形状・寸法等】
総高 89cm(受花・宝珠が欠失しているのでそれを除いた高さ)
基礎 高さ19cmで二段(下段 高さ6cm,正面・背面幅 45cm,側面幅 36.5cm,上段 高さ13cm,正面・背面幅 43cm,側面 34.5cm)となっている。下段の各面は無地であり上端に丸味がつけられている。
上段の正面背面は両側を一条線、その内側を二条線で囲み、その内部は梵字アを入れた月輪が3つ配されている。梵字は浅い平底彫である。側面には同様な梵字アを入れた月輪が2つ配されている。
塔身 高さ50.5cm,幅 正・側面 29.5cm,側面 14cmである。
正面には、線彫の3箇の蓮華の上にそれぞれ月輪が置かれ、弥陀三尊を表わす梵字キリーク、サ、サクが彫られている。梵字は刷毛書で浅い平底彫である。それを受ける蓮花は丸くふくらみ蓮肉をつけ、特に上部キリークを受けるものにはシベをつけている。
縁どりは線彫りで左右及び上辺は内側が2条、側面は1条、下方は内側が1条外側2条である。内側と外側の線の間は1、2cm程度で、ここに墨が入り、白ぬきの連珠紋が入っている。珠の数は竪方向に35箇、横方向に23箇で、下方のものは2~3箇が吹きよせになっている。さらに下方の枠外には連子模様の間に中央に一つ、左右に一つずつ(ただし左右のものは側面にかけて折れている)の巴があり、その文様は三つ巴で、頭が小さく尾の長い鎌倉時代の特色である餓鬼巴である。背面は豊かな蓮座の上に、梵字の胎蔵界中台八葉院の曼陀羅が彫られている。中央には二重円内にアーンクがあり、その周囲の八葉の蓮弁には四仏と四菩薩の梵字が配されている。さらに蓮座の下は縦罫で7画に分けられ下掲のような銘文が刻してある。
(銘文)
右 志 者 過 去 / 尊 霊 刑 卩 中子
九 月 廿 九 日 / 貞 永 元 年 壬辰
末 時 逝 去 / 為 出 離 生 死
住 生 極 楽 也
両側面は共に五輪塔が線刻されていて、上からケン、カン、ラン、バン、アの梵字がある。梵字の下方には蓮座があり、蓮弁にも縦の線に墨を入れている。周囲の線は正・背面と同様で黒地白ぬきの連珠がある。さらに下方の連子巴の巴は、正・背面から折れまがって半分入っている。
なお、塔身の上端と下端の中央に、高さ3cm程度の柄がつくり出され、基礎及び笠にはまりこむようになっている。
笠 高さ16cm,正面の軒幅45cm,側面の軒幅38cm,軒の厚さ4.5cmで両側で心もち厚くなり、反り気味である。上端は17.5cm四方の平らかな面をつくり、更にその上に高さ3.5cm、14.5cm平方の露盤があるが、その上部の内側に5.5cm平方、深さ3cmの穴がある。この上に置かれていたと考えられる受花宝珠は失なわれている。
背面の銘文中に「刑卩」とあるのは刑部であろう。刑部なる人物は判明しないが、東大寺蔵の「周防国吏務代々過現名帳」によると、貞応元年(1222)から安貞元年(1227)の間に、周防国府として刑部亟忠康の名が記されていることは参考になるかも知れない。
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