松藤蒔絵文台硯箱
まつふじまきえぶんだいすずりばこ
防府市
国
重要文化財
室町時代
縦33.2㎝、横56.4㎝、高さ10.7㎝の「文台」と、縦25.7㎝、横12.3㎝、高さ 8.6㎝の「硯箱」の一式。どちらも、梨子地(なしじ=下地の漆の上に金や銀の粉を蒔き、その上に透明な漆をかけて研ぎ出して、梨の実の肌に似たようにしたもの)に、松の樹とそれに絡む藤、流水や雲が高肉や薄肉の蒔絵で表されている。主題の画面を一方に片寄せた表現は室町時代の一傾向を示しており、文台の四隅下の猪目(いのめ)を透かした葉状刳形(くりがた)の脚や懸子(かけご)付きで合口造りの硯箱の形式など唐様を取り入れた特異な例である。
一式として作られたもので残っている数少ない貴重なもので、懸子には、梨子地に藤の花の蒔絵が描かれた柄の付いた墨柄(すみつか)・刀子(とうす)・錐子(きりこ)が納められている。大内義隆が奉納したものと伝えられる。
縦が約33㎝、横が約56㎝、高さが約11㎝の文台と、縦が約26㎝、横が約12㎝、高さが約9㎝の硯箱の一式です。
どちらにも、松の樹とそれにからむ藤、流水、雲が蒔絵で表されています。
一式が揃(そろ)って残っている数少ない貴重なもので、懸子には、同じような藤の花の蒔絵が描かれた柄の付いた墨柄(手を汚さないように墨を挟むもの)・刀子(小さい刀)・錐子(穴をあける小さな錐)が納められています。
松藤蒔絵文台硯箱
重要文化財(工芸品)
昭和55年6月6日 (文部省告示第123号)
防府市松崎町14-1
宗教法人 防府天満宮
室町時代
一具
【品質及び形状】
〔文台〕
木製、長方形の甲板両端に筆返しを据え、四隅の下に猪の目を透した刳形の脚を付す。
甲板上面の左下には波の寄せる土坡上に、松樹とそれに絡む藤を表わす。中央下には下草の生えた巌を、右下には洲浜上の巌の上に小さく松樹を表わす。画面上端には棚引く雲を表わす。
技法は、甲板上面全体を梨子地とし、松樹の幹・巌は高蒔絵、藤の樹幹は薄肉高蒔絵、雲・土坡は研出蒔絵、松枝・藤花・笹・下草・流水は平蒔絵、土坡・洲浜・雲は大小の粉に粗密を交えて蒔暈し、雲中には平蒔絵にて切金・野毛を描き表わす。松・藤の樹幹、巌には金銀の切金を散らす。細部の線は描割り。筆返しには端金具を付けず、内側面沃懸地、外側面梨子地。甲板側面は沃懸地とし、四隅及び長側面中央に金銅魚子地藤花文彫花先形金具を打つ。四脚外側梨子地とし、猪の目部及び四脚周縁に金銅素文覆輪を冠す。甲板裏面、四脚内側黒漆。
〔硯箱〕
木製、長方形、合口造り、削面取りの硯箱で、底四隅には低い刳形脚を付す。身の中央には金銅菊形座に金銅円形水滴(底欠)を嵌む。身全体に嵌め込む形で懸子を納めるが、懸子の側板は身の合口部立上りとして機能する。
懸子には、墨柄、刀子、錐子を納める。
技法は文台と同じで、硯箱の内外面とも梨子地。削面、蓋・身・懸子の口縁は沃懸地。蓋表には流水、巌、土坡上に松、藤、雲を、蓋裏には藤花を1枝表わす。身の底裏黒漆、懸子底裏金淡蒔。墨柄、刀子、錐子の柄は梨子地に藤花を平蒔絵にて表わし、金銅筋入縁金具を付す。但し、流れに梶葉、筆浮彫の硯は後補。
〔文台〕
縦 33.2cm 横 56.4cm 高 10.7cm
〔硯箱〕
縦 25.7cm 横 12.7cm 高 8.6cm
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