5月の終わりから6月上旬にかけ、山口県庁のすぐ東を流れる一の坂川では、ホタルが舞います。一の坂川だけでなく、山口市の市街地のそこかしこにホタルがおり、帰宅時に見かけることもよくあります(山口市は、ごく普通の地方都市です。念のため。)。
山口市内の小川を飛ぶホタル
もともと、山口には、たくさんのホタルが生息していました。多い時代には、数百から数千のゲンジボタルが光の玉になって群れ飛んでいたといわれています。この光景は、源平合戦になぞらえられ、「ホタル合戦」と呼ばれていました。
また、ホタルを愛でる風習は、古くは大内氏の時代からあったといわれています。旧暦4月20日(現在の5月末から6月初めごろ)の夜は蛍狩りをせず、かごに飼っているホタルを逃がしていたそうです。
このように身近で歴史が深い山口のホタルですが、実は、文化財なのです。
「山口ゲンジボタル発生地」として、昭和10年(1935)に、現在の山口市のうち、中心市街地を含む約142平方キロメートルもの範囲が国の天然記念物に指定されています。当時の指定理由には、「げんじぼたるノ發生地トシテ古来著名ナリ六月上旬其ノ羽化最盛期ニ達シタ刻八時頃飛ビ交ヒテ美観ヲ呈ス」(原文のまま)とあります。昔から有名で、季節になると美しい光景を見せていた、ということです。
しかし、昭和30年代後半以降、生活スタイルの変化や、河川改修の影響を大きく受け、山口のホタルは、大きく数を減らしました。
これに対し、昭和40年代半ば以降、全国にさきがけ、自然環境に配慮した河川整備が行われ始めました。また、昭和52年(1977)には、良好な生息環境を維持するため、「天然記念物「山口ゲンジボタル発生地」保存管理基本計画」が策定されました。
また、地元の保護団体による取り組みとして、昭和50年代から、幼虫の放流による個体群の補強・復元も行われています。
よく考えれば、ホタルの舞う県庁所在地というのは、珍しいような気がします。もちろん、郊外でホタルを観察できるところは、いくつもあるかもしれません。しかし、山口では、住宅地のすぐ近く、あるいは、幹線道路のすぐそばでホタルが飛び、初夏の風物詩として人々に愛されているのです。
ホタルを見に来る人々もいます
普段、あまり意識することはありませんが、飛び交う小さな光を見ると、恵まれた自然環境のなかで暮らせていると感じます。
また、これまでのゲンジボタルの保護活動に思いをはせれば、地域の方や、さまざまな分野の機関のたゆまぬ努力と理解があってこそ、今の良好な環境があること、文化財の保護は、文化財保護部局だけではなく、多くの人々の支えがないと立ち行かないことを改めて痛感します。(ι)
〒753-8501 山口県山口市滝町1-1
Tel:083-933-4666 Fax:083-933-4829
E-mail:
Copyright(C) 2010 山口県観光スポーツ文化部文化振興課