去る1月20日(木)、山口県文化財保護審議会が開催され、今年度2件の文化財について、県文化財に指定(1件は新規指定、もう1件は追加指定)することが相応しいとの答申がまとめられました。
県文化財の指定は、山口県報に告示されてはじめて正式な指定となるのですが、今回は新たに指定される見込みとなった文化財1件について、御紹介します。なお、追加指定のもう1件については別の機会に御紹介する予定です。
皆さんは、宮本常一(1907~1981)という民俗学者を御存知でしょうか?今回新たに指定される見込みとなったのは、本県が生んだ偉大な民俗学者・宮本常一に関わる文化財です。
昭和51年7月12日高知県で民俗調査を行う宮本常一(写真左)
明治40年(1907)に山口県大島郡家室西方村(元大島郡周防大島町)に生まれた宮本常一は、郵便局員や小学校の教員を経た後、昭和14年(1939)に渋沢敬三(昨年大河ドラマで取り上げられた渋沢栄一の孫)の主催するアチック・ミューゼアム(※1)に入所し、全国各地の民俗調査を行いました。昭和56年に73歳で没し、勲三等瑞宝章を受章しています。
宮本の民俗調査は、「広くあるいて実地にあたって見ること」を重視し、「昭和一四年から歩きはじめて、(中略)ざっと四五〇〇日旅ですごした」というほど、フィールドワークに徹したものでした(※2)。宮本常一の民俗調査とその成果は、『宮本常一著作集』(現在68巻まで刊行)としてまとめられています。
宮本常一の民俗調査にかかわる調査メモ、聞書きなどを周防大島町が所蔵しており、今回、「宮本常一関係資料」414点が、新たに県指定有形文化財(歴史資料)に指定される見込みとなりました。
宮本常一関係資料414点は、宮本常一の実施した民俗調査の実態とその過程を知る上で重要なものであり、中には、『忘れられた日本人』で取り上げられた「梶田富五郎翁」(※3)に対して行った聞取りも含まれています。
また、宮本常一の趣向を示す詩集や歌集も8点含まれており、これらは民俗学者ではない宮本常一の別の側面を理解するうえで貴重な資料です。
これら414点が県文化財に指定されることにより、本県が輩出した民俗学者・宮本常一を広く知っていただくきっかけとなり、また、コロナウイルス感染症が終息した後には、「宮本常一関係資料」を収蔵し、宮本常一の功績について展示紹介する周防大島町の宮本常一記念館(※4)に、県の内外から多くの方に訪れていただければ幸いです。 (gn)
「①見島調査」(部分)
「40 対馬調査3 豆酘村浅藻」(部分)※上部に「梶田富五郎82才」と見える。
※1 渋沢敬三の私設の民俗学研修室、日本常民文化研究所の前身。
※2 『宮本常一著作集 第31巻』
※3 『忘れられた日本人』の登場人物。久賀村(現大島郡周防大島町)から豆酘村(現長崎県対馬市)にわたり、豆酘村を開拓した人物。
※4 施設の詳細は、周防大島町のHPを御確認ください。
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