小学校の教科書にも登場する歴史上の有名人、聖徳太子。その師であり、高句麗から来日した恵慈和尚(えじわじょう)の創建と伝わる古刹が、熊毛郡平生町の般若寺です。
般若寺には「恵慈和尚像」と伝わる彫刻が残されており、今回、この彫刻を山口県指定文化財に指定することができました。
この像は平安時代後期の作と考えられ、具体的な作者を特定することはできませんでしたが、畿内の優れた仏師の作と考えられます。当初は恵慈和尚をモデルとしてつくられたわけではなく、僧侶の手本として、また寺を守護する者として信仰された像である聖僧像(しょうそうぞう)としてつくられたと考えられることから、文化財の名称は「木造聖僧坐像(伝恵慈和尚)」としました。ただし、この像が「恵慈和尚」と認識されていたことは般若寺に伝わる古文書(古文書には「当山開基恵慈和尚御影」と記されています)から確認でき、少なくとも江戸時代以降は「恵慈和尚像」として大切にされてきたことがわかります。ヒノキ材と思われる一木造りで、像の高さは70.7cmです。
木造聖僧坐像(伝恵慈和尚)
木造聖僧坐像(伝恵慈和尚)【拡大】
①長い眉と落ちくぼんだ目、深い皺を持つ痩身の年老いた人物の姿が、的確に表されており、平安時代後期につくられた制作優秀な木彫像であるとともに、全国的にも作例が必ずしも多くない聖僧像であること。
②山口県において、国または県指定文化財としての聖僧像はこれまでに存在しないこと。
③当初は聖僧像として造られた本像が、近世には恵慈和尚像と認識されており、般若寺を中心とする地域の文化と信仰の歴史を考えるうえでも重要である。
以上3点を踏まえ、令和5年3月10日、「木造聖僧坐像(伝恵慈和尚)」を山口県指定有形文化財(彫刻)に指定しました。
ちなみに本年は、恵慈和尚が亡くなって1400年の節目の年です。
この像の拝観方法につきましては、直接般若寺さん(https://www.hannyaji36.net/)にお問い合わせください。 (gn)
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