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2019/02/15 【ニュース】新規登録の有形文化財(建造物)―赤間神宮水天門及び回廊―

 平成30年11月2日(金)、新たに209件の建造物を登録有形文化財(建造物)とすることが官報に告示されました。これで、7月20日(金)に開催された国の文化審議会で登録有形文化財(建造物)とするよう答申された案件が、正式に登録されたことになります。

 登録された建造物は、いずれ、「山口県の文化財」に追加されます。ただ、解説スペースに限りがあるため、建物の魅力を隅々まで伝えるのは、難しいものがあります。
 そこで、この「トピックス」の場を借りて、建物の内容を、より詳しく掘り下げてお伝えしたいと思います。登録された5件を、3回に分けて紹介する予定です。

 今回紹介するのは、赤間神宮水天門及び回廊です。
 赤間神宮水天門は、下関市阿弥陀寺町、関門海峡に面した小高い丘の上に建つ、竜宮造という珍しい様式の門です。朱と白に塗り分けられ、屋根の上には、金色の屋根飾り(鴟尾:しび)が輝いています。珍しい見た目と鮮やかな色彩に加え、周囲からよく目立つ位置にあることもあり、今や関門海峡のシンボル的な建物となっています。
 回廊は、水天門の両側面に取りついた銅板葺の建物です。平成2年(1990)には、西端に太鼓楼を増築しています。

 戦前の赤間神宮には神門がありませんでしたが、戦後間もなく、当時の宮司が、安徳天皇と二位尼(二位の尼)の住居として平家物語に出てくる竜宮城をヒントに計画しました。そして、境内の戦災復興の一環として、昭和32年(1957)に建てられました。

 建物の設計に携わったのは、角南隆(すなみたかし)と、黒木利三郎(くろきりざぶろう)です。全体の監修を担った角南は、大正期から戦後にかけて、数多くの神社建築を手がけた、いわば、神社建築のスペシャリストです。山口県内でも、遠石八幡宮(周南市:国登録有形文化財)の工事顧問を務めた実績をもっています。
 設計を担当した黒木は、昭和29年(1954)から赤間神宮の社殿の設計に携わった人物です。角南ほどの華やかな経歴はありませんが、福岡県内を中心に寺社の新築・改築の設計監理を担当していた実力派の設計者です。
 
 竜宮城をモデルとする、という斬新な構想と優秀な設計者が力を合わせたことで、美しく目を引く建物が生み出されました。

 完成後は、当時、前例のなかった神社のライトアップというアイデアが実行されました。はじめた当初は、周囲に明かりもあまりなく、関門海峡を通過するフェリーから下関の陸側をみると、水天門が暗がりの中に浮かび上がり、非常に幻想的な風景であったといわれています。また、大分県での植樹祭の際、下関に立ち寄られた昭和天皇・皇后両陛下が通り初めをされました。
 このように、外観が美しく、ユニークなことに加え、興味深いエピソードも持っている建物です。

 竣工から60年余り、当初はあまりに物珍しかった外観や試みも、今やしっかり地域になじみ、人々に親しまれる建物となっています。これからも、地域のシンボルとして、大切にしていきたい建物の一つです。 (ι)



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