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2019/03/28 【ニュース】どう変わる文化財行政

 山口県の国宝といえば、すぐに頭に思い浮かぶのが瑠璃光寺五重塔(右の写真)。この五重塔は、約580年もの長きに渡り昔の姿かたちを今に伝えています。その間、維持・管理にいかに多くの方が携わってきたことか。
 また、各地に古くから伝わるお祭りや神楽舞などの伝統行事(左下の写真)。これらは人々の日常生活の中で生み出されたもので、地域を語るとき、なくてはならない地元の誇りとして大切にされてきた伝統文化です。いったい今日までにどれほどの人たちの知恵や努力で守り伝えられてきたことか。
 しかしながら、過疎化、少子高齢化の進行により、建造物や美術工芸品などの有形文化財においては維持管理者の不在による倒壊・散逸の危機、伝統芸能や祭りなどの無形文化財においても伝承者の不在による消滅の危機が生じています。

 そこで、国では、地方自治体が未指定も含めた域内の文化財の状況を把握し、関係者が協力して総合的にその保存、活用に取り組むことを盛り込んだ文化財保護法の改正が行われ、4月1日から施行されます。
 その内容は、未指定を含めた文化財を、まちづくりの核として、社会総がかりで、その継承に取り組み、まちづくりや地域振興に繋げていくことを促進する法改正です。

 県教委としても、法改正を踏まえ、平成31年度に「文化財保存活用大綱(以下「大綱」という。)」を策定することとしています。また、これからの時代にふさわしい文化財の総合的な視野に立った、地域活性化や地域ブランド力向上につながる文化財資源の地域一体での保存・活用ができるよう市町が策定する「文化財保存活用地域計画(以下「地域計画」という。)」の技術的支援を行うこととしています。
 実は、県内の市町は、まだ「地域計画」策定に名乗りを挙げていません(一歩手前の「歴史文化基本構想」策定中は2市あります。)。今後、県がどのような「大綱」を策定するのか見定め、策定を検討されるのだと思います。また、「『地域計画』を策定するにはどこから手を付けたら良いのか分からない」とか、「いわゆるマンパワー不足であることから手が回らない」というところも多いのではないでしょうか。
 そこで、これまで「歴史文化基本構想」を策定あるいは「地域計画」策定に名乗りを挙げている他県の市町村に手始めを聞いてみました。策定の第一段階としては、「地域の人たちに自分たちの身近にある文化財の良さに気付いてもらうことから始まる」というものでした。生活の中に溶け込んでいて、普段見向きもしない文化財が、地域に根差し歴史文化にしっかりと結びついていることに地域の人たちに気づいてもらい、その後、これらの文化財を保存だけでなく地域一体となって活用できるよう、まちづくりや地域活性化へも繋げていくような仕掛けを作ることが策定の方向性だというのです。
 そのためにも、地域の人たちを対象に講演会を行い、勉強してもらうことが大切ですが、まずは「まち歩き」を勧め、途中、目にする歴史文化遺産に触れながら、「未来へ残したい!」と思う心を育んでもらうように仕向けることが重要なのです。

 そこで注目されるのが、県内の小・中学校における「やまぐち型地域連携教育」の取組です。コミュニティ・スクールを核として、社会総がかりで子どもたちの学びや育ちを見守り支援する取組ですが、その成果としては、郷土愛や地域貢献、社会貢献の意識の高まりなどが挙げられています。さらには、高等学校においても学校・家庭・地域が一体となった「テーマ型コミュニティ・スクール」が推進されており、県では、こうした取組を通して、地域資源を生かした子どもたちの豊かな学びを実現し、郷土を愛する心や地域の担い手としての意識の育成を目指しています。
 今後、「地域計画」の策定においては、是非ともこれらの学校における仕組みを活かし、子どもたちと地域の人たちとが一体となった『「ふるさと再発見」まち歩き』から計画してみてはいかがでしょうか。

 「平成」からもうすぐ新たな時代に移ることになりますが、次の時代ではこれらの貴重な歴史文化遺産を、これまで以上に未来へ繋げようとする取組が推進されていくはずです。そんな中にあって、「地域計画」が必ずや地域における文化財の保存・活用に対する「道しるべ」となることでしょう。その「地域計画」策定に地元の子どもたちが携わったとなれば、きっと何十年経っても地域に愛着と誇りを持つことができる大人に育っていくと信じます。(S)



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