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2019/09/30 【こぼれ話】文化財建造物と動物

 以前のトピックスで、県庁所在地でもホタルが舞うほど、自然環境がよい、という話題を取り上げました。山口県内は、県庁所在地である山口市以外も、おおむね良好な自然環境に恵まれているといえるでしょう。

 豊かな自然環境が、思わぬところで文化財に影響を及ぼすことがあります。野生動物が文化財に被害を与えることがあるのです。具体的には、動物による文化財の汚損・破損です。

 県内で目立つのは、動物の活動により、文化財建造物の屋根の檜皮(ひわだ:ヒノキの樹皮)がはがされたり、穴を開けられたりする被害です。犯人は、よくわかっていませんが、かつて、現地に残されていた獣毛や巣などを動物の専門家に鑑定していただいたときは、ムササビかテンの可能性が高い、という結果でした。
 左の写真は、被害を受けた檜皮屋根の様子です。少しわかりにくいかもしれませんが、上の方に穴があけられていて、そこから檜皮がかき出されて下に溜まっています。

 文化財建造物をまもる手段は、長い文化財保護の歴史の中で、ある程度確立されてきました。経年劣化には修理、地震に対しては耐震補強、落雷には避雷装置、火事については自動火災報知機の設置など、内容に応じた手法がとられます。また、近年、全国で散発的に発生している「人」による害に対しては、防犯カメラ等の設置によって対応しています。

 しかし、動物害への対策は、まだ、効果的な事例が少なく、試行錯誤が続いている状況です。その理由として、クマのような大型のものからテンのような小型のものまで、地域や周辺環境によって多様な動物が害獣となることがあげられます。また、文化財やその周辺の景観に悪影響を及ぼさない方法を取る必要があるなど、通常の獣害対策とは異なったノウハウが必要です。個々の文化財の性質や害を及ぼしている動物の種類に合わせた対策が必要なため、まだまだ発展途上の分野なのです。

 動物が文化財建造物を傷つける、といっても彼らに悪意はありません。しかし、文化財保護の立場からすると、非常に困った行為です。いずれは、「共存」できるよう、知見を蓄積し、対策を練っていきたいと考えています。(ι)



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