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2020/01/27 【ニュース】重要文化財(建造物)の耐震対策現況調査の結果
昨年はフランス・パリのノートルダム大聖堂、沖縄県首里城跡の復元建物の火災をはじめ、台風第19号による広域にわたる土砂災害など、「災」の目立つ1年でした。
被災された皆様には、謹んでお見舞いを申し上げます。
こうしたなか、12月23日に文化庁から、国宝・重要文化財建造物の耐震対策の調査結果が公表されました。
文化庁の調査は、文化財所有者や地方公共団体等の関係者の間で、耐震対策の状況の確認や耐震化に向けた意識の向上を図るために行われました。調査対象は、全国の国宝・重要文化財建造物のうち、4,080棟です。山口県では、74棟が調査対象となりました。
調査の結果をみると、約95%(3,890棟)で地震の際の安全性の確保が図られていました。これらのうち、耐震対策が完了しているものは約62%(2,536棟:グラフの青色)、耐震診断により耐震性がないと判断されたもののうち、「地震に対する対処方針」(耐震補強等が完了するまでに取るべき暫定的な方策を定めたもの)の策定により安全性の確保が図られているものは約33%(1,354棟)でした。耐震対策に対処できていないものは、約4%(190棟)でした。
県内の調査結果をみると、地震の際の安全性の確保が図られているものは、約78%にとどまりました。災害対策のうち、防火施設(自動火災報知機)の設置率が100%だったことを考えると、地震対策の遅れが目立ちます。
県内で地震対策が進んでいない具体的な理由は、案件ごとにさまざまですが、根底には、被災経験がほとんどないことがあるのかもしれません。具体的な数値を持っているわけではありませんが、地震による被災経験のある物件・地域では、耐震対策の進みが早いように感じます。
確かに、県内の文化財建造物で、地震によって大規模に被災した記録のある物件は見当たりません。より身近に脅威を感じる火災や風水害への対策が優先され、地震対策が後回しになっているのかもしれません。
しかし、近年の地震の発生状況を考えると、「これまで地震を経験していない」ことを理由に耐震対策を先送りすることはできません。ただ、専門的な耐震診断や、それを受けた耐震補強工事には多額の費用が掛かり、国庫補助制度があるとはいえ、所有者にも費用負担が生じます。
そこで、まずは「地震に対する対処方針」の策定を推し進めることで安全性の確保を図り、そのうえで、所有者の財政状況や修理工事実施のタイミングなどをみながら専門的な耐震診断・耐震補強工事の実施を検討する、という2段構えで耐震対策に臨みたいと思っています。(ι)
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