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2022/12/23 【文化財小話】紅葉の名所「漢陽寺」に行ってきました!

 11月中旬、秋が深まり、どこかで紅葉を楽しみたいと思っていたところ、頭に浮かんだのは紅葉の名所「漢陽寺」!そこで、11月某日、漢陽寺を訪れました。
 漢陽寺は周南市鹿野に位置する禅宗寺院で、応安7年(1374)に創建されたと伝わっています。境内には、作庭家で庭園研究者の重森三玲(しげもりみれい)氏(1896~1975)により、昭和44年~48年に作庭された庭が6つあり、さまざまな様式、主題、意匠で造られた複数の庭園が、造園文化の発展に寄与した意義深い事例であることから、令和3年10月11日に国登録記念物(名勝地関係)に登録されました。
 漢陽寺に到着すると、正面の山門にカメラを構える観光客が多くみられました。その立派さに私も写真を撮りながらしばらく眺めていましたが、ふと左側を見ると、「鏡池」と紅葉の組み合わせに目を奪われました。近づくと、澄んだ池の中を泳ぐ錦鯉、水面に浮かぶ紅葉が一層美しさを際立ており、思わず「きれい」と口に出してしまいました。一方、正面から見て右側には、重森氏が晩年に作庭した「曹源一滴(そうげんいってき)の庭」があります。この庭は、和歌山県の国指定名勝粉河寺(こかわでら)庭園をモデルとし、石組だけで滝や水の流れを表しています。ちなみに、ここには約27トンの巨石が使用されています。この巨石は、重森氏が他の庭を造っていた当時、漢陽寺の近くの国道で起きた山崩れの際に落下してきたものです。これだけ重いものをどうやって運んだのか気になりますね。山門前の三方を見ただけで満足しそうになりましたが、まだまだこれからだと胸を膨らませ、本堂に足を進めました。
 本堂周辺には、重森氏が作庭した「曲水(きょくすい)の庭」、「蓬莱山(ほうらいさん)池庭」、「九山八海(くせんはっかい)の庭」と重森氏の弟子である斉藤忠一氏が作庭した「祖師西来(そしせいらい)の庭」(国登録には含まれていない)の計4つの庭園があります。どの庭園も紅葉がアクセントとなり、秋にしか見ることができない美しい景観でした。中でも本堂南側にある「曲水の庭」は、枯山水形式の庭(岩石や砂だけで造る庭園形式)に曲水(曲がりくねりながら流れる水)を融合させた珍しい庭園で、砂の白色や苔の緑色、岩の灰色など、様々な色により素晴らしい景観を成しており、さらに庭園を囲む塀の上から見える幾本かの紅葉によって庭園が彩られ、この時期しか見られない美しい景観となっていました。
 本堂の中庭には、地蔵菩薩が子供と遊ぶ様子を枯山水で表した「地蔵遊化(じぞうゆうげ)の庭」があります。円状に据えられた石のうち、西北角の石が両手を広げた地蔵菩薩を表し、他の石が子供たちを表しています。ここは一年中ほとんど変わらない景観となっていますが、中庭を様々な角度から見て、地蔵と子供達が遊ぶ姿を想像すると趣があって良いかもしれません。
 最後に、今回の記事では、紹介できなかったことがまだまだたくさんありますが、文字では表せない魅力もありますので、実際に漢陽寺の雰囲気を感じながら、境内を巡ってみてはいかがでしょうか(境内にはカフェもあり、ゆったりとした時間を過ごすこともできますよ)。(RS)

※聴流殿の南に重森氏が作庭した「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)の庭」がありますが、通常は非公開となっています(特別公開あり)。



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