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文化財要録コンテンツ

名称関連文化財名称友信神楽舞
要録名称友信神楽舞
指定関連指定区分・種類無形民俗文化財
指定年月日平成3年4月5日
所在地関連所在地
所有者関連所有者

保持者関連
保持者
友信神楽保存会

文化財詳細
由来及び沿革

(1)友信の地について

 旧阿武郡田万川町は、小川地区と江崎地区の2地区から成った。小川地区は、江戸時代初期の小川郷(慶長15(1610)年検地帳)が、享保年間に上小川村と下小川村の2村となり(『防長地下上申』)、さらに、下小川村が、寛政年間、中小川村と下小川村に分かれた(『防長風土注進案』)。『防長風土注進案』では、「上小川村」は3,288石余、「小川中・下両村」は3,414石と記されている。現在、中小川と下小川は勝馬田八幡宮の氏子圏、上小川は武氏八幡宮の氏子圏に属する。

 友信は、中小川にあって田万川町のほぼ中央に位置し、四方を山に囲まれた集落である。友信という地名は、鹿ケ嶽(今の城山)に城跡があり、相馬総二良友信が居城したことによると伝える。

 明治時代末期には50戸の家があり、昭和49年の友信神楽保存会発足時には、37戸、現在は27戸である。

(2)友信神楽舞の由来

 紀州熊野(和歌山県)から小川村川井に勧請されていた熊野権現を、萩藩家臣繁沢主水(中・下小川村のうち472石余の給領主)が、寛文7年(1667)、友信後山(権現山)に遷座し、友信権現としたという。(『防長風土注進案』参照)

 古老によれば、この神楽殿の落成にあたり、氏子の若い衆が、国ケ峠の原庄屋の世話で、奉納したのが、友信神楽舞の起源と伝える。須佐益田家の使者も宇谷道より参加したともいう。当時の友信は、今の行政区の13区(友信)、14区(後山)を中心にして、15句(足谷)の一部を含んでいた。その後、江戸時代・明治時代には、旧暦9月15日に奉納されてきたと伝える。

 明治時代末期に神社の合併があり、友信権現は、下小川の勝馬田八幡宮に筆頭合祀された。友信権現は今も残っていて神事場もある。また、友信権現の鳥居(文政10(1827)年銘)は、現在の友信天神社に移されている。

 その後、友信天神社と勝馬田八幡宮に神楽舞を奉納してきた。

 天神社の場合、天神祭のヨド祭りとして神楽舞を奉納した。カミオロシは天神社で行い、シオハライをムシロ2枚程の広さで舞う。その後、旧公会堂(寮とよんでいた)で、夜明けまで神楽舞を演じた。現公会堂(昭和58年建築)は、神楽奉納場であるとともに衣裳収納、練習の場所でもある。

 昭和49年に保存会を結成、昭和56年6月15日、田万川町指定無形民俗文化財に指定された(指定名称「友信神楽舞」)。

 なお、天神社については、『防長寺社由来』に「下小川友信後山天神社弐間四面かやふき」(元文2(1737)年)の記載がある。

 また、勝馬田八幡宮については、『防長風土注進案』に「往昔豊前国宇佐より小川村馬場の尾へ勧請し奉り、其後応安元戊申勝馬田山へ御遷座御座候」(応安元年は西暦1368年)の記載がある。

友信権現

 往昔紀州熊野より小川村川井と申所へ勸請し奉り、其後寛文七年丁未友信へ遷座御座候由

社料御除田高六斗

  伹繁澤主水様御知行所

 神殿壹間四方、神楽殿二間ニ三間孰も萱葺

 祭神

  伊弉冊尊 速玉男命 菊理姫命 事解男命

  泉道守命 ヨ樟日命 

 祭日 九月十五日十六日

(『防長風土注進案』による)



内容

(1)神楽舞の大要

ア 準備

 友信天神社の場合、祭りの7~10日前より練習を行い、採物づくりを行う。

 当日は祭りの受持ちと舞殿づくりに分かれ、朝から参道やお社の掃除、また、一方では、友信部落公会堂に舞殿をつくる。天蓋(テンガイ)を吊し榊を立て、神庭(カンド)に新しいムシロ2枚を縦に敷いて竹ヒゴで止め、背後に幕を張って準備を終わる。昼間(午後1~2時頃)、天神社の神事が神職と当屋(トウヤ)を中心に行われる。

 夕方になると祭客(マツリキャク)と称して親戚の人を呼び、酒を酌み交わして、いわゆる秋祭の行事(「キャクマツリ」という)をそれぞれの家で行う。

 勝馬田八幡宮の場合、神楽殿があり、舞殿準備は天蓋(テンガイ)を吊り、榊(サカキ)を立て、背後に幕を張る。

 なお、舞殿準備における天蓋(テンガイ)及び主な採物(トリモノ)作りについては次の頁に図示している。

◎舞殿準備及び採物作り

1舞殿準備 天神社では、公会堂に舞殿を作る。天蓋を吊り、榊を立て、幕を張る。

 勝馬田八幡宮の場合、舞殿があり、天蓋を吊り、榊を立て、幕を張る。

※1 雲 天蓋を吊す枠で、竹を組み合わせて作る。これに桧又は紅葉をのせて作る。

 中心を50cm角にあけて雲の上に上るようにしていた時もあった。現在でも「黒塚」を演じる時には昇る。だし、天井が高くないとできない。

2採物作り

①天蓋

②にぎり幣 1人1本で、10本位。

 幣は青・赤・黄・紫・白の5色を組み合わせる。(色紙は1枚で白紙は2枚、色紙の間に白紙を組み込む)

 幣は、丸竹で長さが45cmのものに2組をつけて仕上げる。

③弓矢 竹を曲げて図のようにして糸を張り、上と下に花幣をつける。

④花ザイ 主として鬼の持ち物で、70~80cmの丸竹(直径1.0~1.2cm)の両端に花幣をつける。

⑤芽の輪 直径60cmの竹の輪を作り、花幣を巻きつけて、中央の上に小幣をつける。

 ※花幣は④と同じ寸法で作る。

⑥小銭鈴

⑦小太鼓のブチ 40cmの竹の棒に花幣をつける。

⑧十束の宝剣 木で作る。

イ奉納

 昭和20~30年代の友信天神社奉納では、午後9時頃より天神社神殿に昇って、「塩祓(シオハライ)」の舞で四方を祓い清め、神を迎えて神庭で神楽舞を奉納、夜が白々となるころ「大蛇(オロチ)」の舞で締めくくられていた(これを「夜明けにジャが出る」という)。

 現在の天神社奉納では、友信部落公会堂舞殿で、午後7時頃から、「塩祓」の舞で始まり、午前0時頃に「大蛇」の舞で終わる。翌日、「ハナ開き」を行う。

 勝馬田八幡宮奉納では、神楽殿で、午後2時頃から「塩祓」の舞で始まり、午後6時頃に「大蛇」の舞で終わる。

 なお、最近2年間に奉納した曲目は次のとおりである。(下線部は、全12曲目それぞれのもっとも最近の奉納を示している)

・平成元年9月29日 下小川 勝馬田八幡宮秋季大祭

 1)「塩祓」 2)「四神(ヨシン)」 3)天神(テンジン)

  4)「塵輪(ジンリン)」 5鐘馗(ショウキ)」) 6)「大蛇」

・平成元年10月18日 友信 天神社天神祭

 1)「塩祓」 2)「岩戸開き(イワトビラキ)」 3)八幡(ヤハタ)

  4)「黒塚(クロヅカ)」 5)恵比寿(エビス)」 6)「鐘馗」

 7)「大蛇」

・平成2年10月18日 友信 天神社天神祭

 1)「塩祓」 2)「四神」 3)「塵輪」  4)「天神」

 5)「恵比寿」 6)「鐘馗」 7)「大蛇」

・平成2年12月1日 下小川 勝馬田八幡宮秋季大祭(大嘗祭奉納)

 1)「塩祓」 2)「四神」 3)道返し(チガエシ)

  4)「かっ鼓(カッコ)」 5)黒塚 6)「塵輪」

(2)神楽舞の基本

ア楽器と旋律

 神楽の囃子方に使用する楽器は、大太鼓(オオダイコ、オオドウともいう)、小太鼓(コダイコ、コドウともいう)、合わせ鉦(アワセガネ、スリガネともいう)、笛(フエ)の4種類である。

 大太鼓は主音で小太鼓が相打ちをするが、合わせ鉦は常時拍子をとる。笛は掛歌に合わせて吹く。

 音から口説で継承されている。

 リズムは、曲目によってそれぞれ特徴があるが、大太鼓の基本は次のとおりである。

 舞に合わせて、音の強弱速さを組み入れて、繰り返し打つ。

 ◎神型太鼓

 トンツクトントン。カチカチカッチ。

 トンカチカッチ。カチカチカッチ。

 ◎鬼ばやし

 トンコトンコスッテトン。

 トンカカッカカッカッカッカ。

 ◎喜びの舞

 トンツクトントン。スッテントン。

 トンツクトントン。スッテントン。

イ基本となる足の運び

 図は、いずれも、下が正面、上が囃子方の側である。

(3)曲目並びに舞子・衣裳・採物及び囃子方・楽器一覧表

/曲目/(舞子)出演者/衣装/数量/採物/数量/(囃子方)楽器/人数/

/塩祓/神(2人)/千早袴 烏帽子 ※白衣・タクリ・白足袋・腕ぬきは、すべて舞子につける/各1 各1 各1/にぎり幣 扇/各1 各1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/四神/神(4人)/千早袴 烏帽子/各1 各1/にぎり幣 大鈴/各1 各1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/岩戸開き/天照皇大神 児屋根之命 太玉之命 宇津女之命 手力男之命/冠・面・大御神着 面・千早袴・烏帽子 面・千早袴・烏帽子 毛頭・面・姫着 面・大口・肩切・荒平/1式 1式 1式 1式 1式/日ノ輪 にぎり幣 鈴 にぎり幣 鈴 矛 大鈴 榊 なぎなた/1 1 1 1 1 1 1 1 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/八幡/神(八幡麻呂) 鬼(第六天)/烏帽子・面・神羽織・大口水干・鎧 毛頭・面・鬼着・大口肩切/1式 1式/弓 矢 花杖/1 3 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/塵輪/神(仲哀天皇) 介添(高麻呂) 男鬼(塵輪) 女鬼/烏帽子・面・水干・千早大口 面・カルサン・神羽織・鳥烏帽子 毛頭・面・鬼着・大口肩切 毛頭・面・鬼着・大口肩切/1式 1式 1式 1式/にぎり幣 扇 刀 弓 矢 花杖 花杖/1 1 1 1 3 1 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/黒塚/法印 剛力(2人) 鬼女(悪女) 狐 三浦ノ介 上総ノ介/面・烏帽子・千早袴・神羽織 面・荒平・千早大口 毛頭・面・姫着 面・狐着 烏帽子・カルサン・鎧 烏帽子・カルサン・鎧/1式 各1 1式 1式 1式 1式/にぎり幣 鈴 ザイ 鈴 扇 傘 弓 矢 刀/1 1 各1 各1 1 1 1 3 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/恵比寿/恵比寿/鳥烏帽子・面・千早袴/1式/にぎり幣 扇 ビク 竿 鯛/1 1 1 1 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/道返し/武甕槌之神 鬼/烏帽子・面・鎧・大口・神羽織 毛頭・大口肩切・鬼着/1式 1式/幣 扇 刀 ザイ 刀/1 1 1 1 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/天神/天神(道具) 介添(随神) 鬼(時平)/烏帽子・面・鎧・千早大口 鳥烏帽子・荒平・鎧・カルサン 面・大口肩切/1式 1式 1式/にぎり幣 扇 刀 弓 矢 刀 鈴/1 1 1 1 1 1 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/鐘馗/神(鐘馗) 疫神/冠・面・下着・大口・水干 毛頭・面・烏帽子・千早袴・神羽織/1式 1式/宝剣 茅ノ輪 花杖 鈴/1 1 1 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/かっ鼓/かっ鼓 切り目/荒平・面・千早・カルサン 烏帽子・面・千早袴/1式 1式/小太鼓 幣 幣 花ブチ 扇/1 1 1 1 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

/大蛇/須佐之男命 足名椎(翁) 手名椎(姥) 稲田姫(娘) 姫(娘) 大蛇(4匹)/冠・須佐之男着・タクリ(タスキ)・面 烏帽子・面・千早袴 毛頭・面・姥着 冠・毛頭・姫着・面 毛頭・姫着・面 蛇頭・蛇胴/1式 1式 1式 1式 1式 各1/幣 扇 剣 杖 杖 幣  (花火)/1 1 1 1 1 1/大太鼓 小太鼓 合わせ鉦 笛/1 1 1 1/

(4)友信神楽舞の特徴

ア神楽囃子

 石見神楽系は一般に八調子が多いが、友信神楽舞では六調子である。大太鼓を打つ回数は八調子に比べると少なくゆっくりであるが、一定時間内での所作は同じであるので、相対的に所作が速い。

 なお、友信神楽舞では、足を水平に保ち、足の裏を見せない「サシアシ」という足先の技巧を、昔から口説(クゼツ)で継承している。

イ神楽歌

 大太鼓の胴取り(ドウトリ)による神楽歌が多いのが、友信神楽舞の特徴である。12の曲目のうち、最も少ない「かっ鼓」で4首、最も多い「天神」では24首の神楽歌が歌われ、平均すると約12首の神楽歌が伝承されている。

 なお、他の神楽舞の場合、たとえば「山代本谷神楽舞」では本歌1、掛歌5の計6首が伝承されている。

ウ神楽舞

 「塵輪」など悪魔退治の曲目で、悪魔捜しの塵防(オウボウ)舞と立合囃子の組合せなど、独特のものがある。

 「大蛇」の曲目で、山口県内の神楽舞で大蛇が演舞するのはふつう1~2匹であるが、友信神楽舞では4匹が同時に演舞する。



参考情報関連
参考情報

友信神楽保存会活動報告

 昭和49年以後、毎年、友信天神社と勝馬田八幡宮とに奉納してきた。

 その他、西日本神楽大会(昭和49年4月、浜田市)、石見神楽大会(昭和49年5月、益田市)など、県内外で年平均7回程度公開を実施している。

子ども神楽について

 舞子の老齢化と若者の減少により、昭和52年、後継者維持のため子ども神楽をつくり、小・中学生に教えて、子孫に伝承しようと保存会が一丸となって努力している。現在、子ども神楽は、友信4名と近隣の12名の合計16名が受け継いでいる。

 平成2年10月20日、岡山県高梁市で開催された、第32回中国四国ブロック民俗芸能大会には、山口県代表として友信神楽保存会から子ども神楽を公開した。




画像
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