名称関連 | 文化財名称 | 紙本墨画淡彩湖亭春望図 |
要録名称 | 紙本墨画淡彩湖亭春望図 天與清啓の賛がある | |
指定関連 | 指定区分・種類 | 有形文化財(絵画) |
指定年月日 | 平成8年5月24日 | |
所在地関連 | 所在地 | 岩国市横山2丁目7番3号 (吉川史料館) |
所有者関連 | 所有者 | 財団法人 吉川報效会 |
本図には、天與清啓の題詩「湖亭春望」(七言律詩)があり、図に印章・落款はないが、雪舟筆の伝承がある。
図については、狩野探幽(1602~74)の極札により、「雪舟筆」、「自賛」の「山水」とされている。自賛というのは妥当でないが、周文風の様式をふまえることから、近年、「雪舟様の画法を伝えるが、中央の松樹の描写法、技巧的な図様構成、遠景の五重塔など、なお、検討を要する」(武田恒夫、『吉川家歴史資料目録』解説)、あるいは「中央画壇に学んだ経歴のもちぬし」(宮島新一)などの見解が出されている。
賛者の天與清啓は(生没年不詳、15世紀はじめ頃の生まれか)、元の渡来僧清拙正澄(1274~1339)の系統の禅僧(臨済宗大鑑派)である。大内盛見(1377~1431)、大内教弘(1420~65)父子との関わりがあった(寛正6年(1465)「飛泉亭之詩并序」)。また、享徳2年(1453)と応仁元年(1467)の2度にわたり遣明使節となって渡海している。2度目の時は正使であり、渡明の一行の中には別船であるが雪舟等揚もいた。
天與清啓は、寛正6年(1465)8月、仁保弘有像(山口市、県指定)にも着賛しており、拙宗筆山水人物画への着賛(七言絶句)も知られる。湖亭春望図には、彼が渡航を前に周防に滞在していた時期(寛正6年乃至7年頃)に賛をした可能性がある。
なお、本図が吉川家に伝来した事情は不明であるが、同家には、他に、応仁元年(1467)書写・大内義興所持の「貞応本古今集」、大永2年(1522)陶弘詮書写の「吾妻鏡」(重要文化財)など、大内氏関連文化財の伝来が知られる。
(1)寸法 (本紙)縦84.0㎝ 横36.4㎝
(2)品質、形状等
紙本墨画、淡彩、掛幅装。早春の湖辺、水亭に坐して対岸を見やる高士の姿をえがく。対岸には五重塔が夕もやのなかにそびえている。
近景の垂直と遠景の水平との呼応によって基本的な構図が組み立てられている。岸から一本の松が美しい枝ぶりを見せながら立ち上がる点や、近景が対角線内に収まるいわゆる辺角の景であることなど、室町幕府お抱え絵師であった相国寺僧周文風の様式がふまえられている。
「白衣観音図」(豊浦町、県指定)や「天神図」(山口市、国指定)と同様、上方に着賛があり、室町時代の詩画軸の一種である。
賛(題詩)は次のとおり。
「湖亭春望
(印) <暁遠夜鶴>
湖曲寒残梅未盡 新晴散策恣閑遊
塵間回首百年閙 世外藏縦万事休
暮嶂層々千仏頂 春波渺々一僧眸
夕嵐渓上湧孤塔 遠眺使吾終日留
天與老雪(印) <清啓>」
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