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文化財要録コンテンツ

名称関連文化財名称住吉神社法楽百首和歌短冊(明応四年十二月)
要録名称

住吉社法楽百首和歌短冊(明応四年十二月)

 附 三条西実隆筆序文並相良正任、杉武明連署添状 一冊

    新撰菟玖波集作者附 一冊

    宗祇署名短冊箱 一合

    毛利秀元奉納蒔絵短冊箱 一合

指定関連指定区分・種類重要文化財(書跡)
指定年月日昭和28年11月14日 (文化財保護委員会告示 第3号) 書第1637号
所在地関連所在地下関市大字楠乃1162の2
所有者関連所有者宗教法人 住吉神社


文化財詳細
制作等の年代又は時代
室町時代 明応4年(1495)

員数
一帖

製作者
後土御門天皇等筆

品質及び形状
紙本墨書、折本装

寸法又は法量
縦38.8cm、横8.8cm、厚6.3cm

本文

[三条西實隆筆序文]

長門國住吉社者最初垂跡之霊地焉威光培増之神明也 爰新撰菟玖波集修撰之時宗祇法師竊凝丹心以祈素願遂終彼一集篇什奉納此百首和歌忝交御製之金章相擬報賽之玉帛 蓋非神助之感應者豈得吾道之再昌乎 伏希住吉浦之浪鎮傳万歳之聲筑波山之陰遠加千秋之恵而已干時明應乙卯嘉平中旬記之

 従二位行權大納言兼侍從藤原朝臣實隆

[相良正任・杉武明連書添状]

此御百首 短冊百枚 御裏紙序 三條西殿御筆檀紙一枚 御作者注一紙 薄様切紙 等事於御寶殿可致奉納之由被仰出候可爲社頭不出候 若懇望之仁候者於御寶前可被許拝見并書寫候短冊者毎度數之内失却候堅固可被納置之由被仰出候

 恐々謹言

 明應五乙卯

 三月廿三日 正 任花押

          武 明花押 

 一宮大宮司殿

[百首和歌短冊]

1 初春  よる浪の音はかはらて住の江や松のみとりそかすみそめるける  後土御門天皇

2 霞  とほき世の春をも見せて山となる塵のまかひにかすむ色かな  後柏原天皇

3 霞  春の日のひかりにのみはさもあらてかすみにきゆる嶺のしら雪  政家 

4 鶯  しるへせし風の行衛か花の香の匂ふ山路のうぐひすの聲  冬良

5 春雪  下もえの草葉かすそふ程みえてみとりになりぬ野へのあは雪  道奥

6 若葉  つみのこすさはの若菜はおのつから下ゆく水や根をあらふらむ  尚通

7 梅  冬と春とゆきかふ年の雪の枝にかたくそかをる梅の下風  尊應

8 梅  梅か枝にたくふにほひは木にもあらすくさにもあらぬ春風そふく  實淳

9 柳  朝露のみとりのいとのたま柳ひかりをみかき色をそめつつ  教秀

10 春雨  青柳のかれ葉におもき露にこそおとせぬ春の雨もしらるれ  宣胤

11 歸雁  故郷の春にとそゆくあまつ雁やまより山のはなに別れて  宗綱

12 花  春風にゆく衛もしらぬ花の香のいかて櫻になをのこるらん  豊通

13 花  明よるもさかりの花はつれなくてまつにそかへる春の山風  實隆

14 花  わたつ海のかさしの浪もにほふらし磯山さくら春風そふく  實隆

15 花  見れはまつうちおとろきて木の本のまはゆきまての花さかりかな  教國

16 花  あひにあひて花のさかりは日も永く風ものとけきはるのそらかな  御土御門天皇

17 春月  花のかは袖にとめこし夜半の月やとす影なくかすむ空かな  政為

18 款冬  よる浪の露をきそへてやまふきの枝もたはゝに見ゆるきしかけ  勾當内侍ト云ヒ傳フ

19 藤  咲きのほるしるしそ見ゆる藤の花はふ木をなみの見おつくしにて  宋世

20 三日盡  心ならぬ春の別も今しはとをらは柳や形見ならまし  為廣

21 卯花  夕暮の露ひかりそふうの花はまかきも山の月かあらぬか  秀種

22 郭公  思ひねにねたれはせめて郭公うつつよりきく夢もみてまし  元長

23 郭公  誰さとに又いそくらんほとときすよかれかほなる一聲の空  通世

24 郭公  住吉のまつ夜もいはすほとときすつきも西なる海をこそへと  基綱

25 夏月  いりあひの鐘よりいてし夏の夜のつきもや秋のあかつきの聲  公助

26 五月雨  夏草のなひく末葉はうきながらさそわぬ水にさみたれの夜  雅俊

27 五月雨  舟そよる名には田裳の嶋かくれたのむともなき五月雨のころ  肖柏

28 螢  すみの江や松にかよへる秋風ををのれつけてもとふ螢かな  行二

29 夕立  かきくもり夕立すなりなる神のをとはの山の瀧もとゝろに  宗祇

30 納涼  水のうへそいくかもあかね夏引のてひきの糸のなかき日くらし  宗長

31 初秋  萩の音に秋とはしるし一葉ちるこすゑにわかぬ風の行衛も  後柏原天皇

32 七夕  天の河こきゆく舟に一とせのうらみもけふやあとの白浪  玄清

33 七夕後朝  おもひやる心をかしてたなはたのけさの別やなけきそふらん  雅俊

34 露  言の葉の色そふ秋に菟玖波山しけきめくみの露を見るかな  實隆

35 萩  九重の都も秋は萩の葉にのきはの山のあらしをそきく  實淳

36 萩  契りあれや鹿たちならす山陰のそのの一樹のもとあらの萩  尊應

37 薄  ほにいつる秋まち見てもしつのをか小花かりふく軒そみしかき  冬良

38 虫  かりころもすそ野の花に宿とはて帰る袖をやむしはうらむる  基綱

39 鹿  またよそにうつろひ行くかさをしかの臥すあと見ゆる萩の花妻  宣胤

40 初雁  遥々となれぬ都のたひにきていつくに宿をかりのなくらむ  教秀

41 月  海とほく月をも西にあふきつゝつゝをの神のむかしをそ思ふ  秀種

42 月  神もさてめてさらめやはこれそこのつもりのうらにふくる月影  宋世

43 月  何ことかおもひのこさんつくつくとくまなき月にむかふよなよな  勾當内侍ト云ヒ傳フ

44 月  見し事もききしも今はあらぬ世にこれやむかしの秋の夜の月  政家

45 月  秋は又てりそふ月のならひをもみわかぬ花は春やわすれぬ  後土御門天皇

46 擣衣  ほのかにも有明の月のふくるまてをちの里人衣うつなり  實香

47 霧  あらしつる野分のあとに夕霧のまかきをたのむやともはかなし  宗綱

48 紅葉  露霜をたてぬきにしていとはやもおりしる木々のから錦かな  道奥

49 紅葉  紅のけちめあらはす松かえやこの葉むなしき時雨なるらん  爲廣

50 暮秋  をくりこしなこりは猶や身にしまん野にも山にもくるる秋風  政爲

51 初冬  すみのえや色には見えぬ松風の音にしくれて冬は来にけり  尚道

52 時雨  この頃は木の葉みたれて夕しくれあらそひかぬる音のさひしさ  豊道

53 落葉  今も尚しくれの雨の名残とてこけちをそめてちる木葉かな  政家

54 落葉  定めなきしくれにそめし木の葉とてちらてしとまる一枝もみち  元長

55 冬月  雪さむき尾上の嵐ふくる夜につかぬ鐘きく月の下庵  尊應

56 霰  一とほりふりくるあられはけしくてあめになる日そかつのとかなる  政爲

57 雪  しろたへの高根はそれか都まて雪ふきをくれひらの山風  後土御門天皇

58 雪  とははやな冬こもりにし真木の戸も雪のあしたそ心みえける  後柏原天皇

59 雪  しら雪のつもれる上は里人のふむ音もなきまへのたなはし  實淳

60 歳暮  行きかへりかきりはなきを暮はつとおもへはとしも老そかなしき  宗祇

61 初恋  つつむへきゆゑをもしらてあちきなくなれぬ涙をもらしつるかな  宋世

62 忍恋  おほつかなはていかならむをろかなる心ひとつにつつむおもひは  尚通

63 忍恋  しらせはと思ふ心をたのみにてつつむもいつをかきりなるらん  宗綱

64 不遇恋  さきの世のちきりしらはやかくはかりつれなかるへきむくいありやと  後土御門天皇

65 不遇恋  しつみてもこの世にかへるつみしあれなあはていのちのうきにたえなは  實淳

66 不遇恋  人そうき花の下ひも春風のふくをもまたぬためしある世を  肖柏

67 不遇恋  よそにのみおもはんよりは偽のうきをたにしる夕暮もかな  行二

68 初逢恋  ならはしの涙ふきほせ我おもひこよひすきまの手枕の風  尊應

69 暁別恋  行きかへり後もたのまぬあふ坂にたたこのたびの鳥のねそうき  基綱

70 後朝恋  けさは猶うき暁のこころさへ身をわかれてはたれしたふらむ  季種

71 逢不会恋  いまは又なけく涙やつつまましみつのかしはのたちし袂に  冬良

72 逢不会恋  月は猶その夜を残す園のうちにひとはかけせぬ床の淋しさ  道奥

73 逢不会恋  うかりつる別れにこりぬ心をも見えはや人の夢の枕に  政為

74 逢不会恋  はてはかくつれなき色のありながらなそや一夜のあふの松はら  宋世

75 忘恋  これも猶同し心にあらねはやわすらるゝ身はわすれさるらん  政家

76 忘恋  さすか又おもひやいつるとはかりにとはぬ月日をおとろかさはや  教國

77 忘恋  それをたにかそへていまは忍ふかなおとろかされてとひし夜ころを  通世

78 恨恋  たかかたに豊浦の嶋のふた心かけても波に袖しほるらむ  雅俊

79 暁  鳥のねはよしはかるとも仕へ行くみろはまよはん心なめらや  為廣

80 松  時わかて幾代高砂住のえもこすゑにしるく松のへぬらむ  家長

81 竹  ふりうつむ雪にふしてもしたをれのこゑをはきかぬ庭のなよ竹  教秀

82 山  にこりなき流のすゑとさそはれて猶みなかみの山そゆかしき  豊通

83 河  つくはねのたえぬ流や見なの河渕も瀬になるうらみなからん  公助

84 橋  山人のをのか手なるるわさなれやわたすもかりの谷の柴はし  雅俊

85 關  心たにうき世にとめぬ物ならはほかにへたつる関は有とも  冬良

86 旅  故里に通ふ夢ちの関守やまくらにろかき山風の聲  尚通

87 旅  いくかへていつこにはてむ行末の山もななおの八重のしら雲  玄清

88 海路  船出する追手もあれな浦遠きしほ干の名残なみ風もなし  後柏原天皇

89 山家  のかれてもこの世のうちはとにかくに心にかなふ山すみやなき  政為

90 山家  たつのはや道ある世をも松風に猶山ふかく人やすむらん  實隆

91 田家  なかれ行美逗野の里末みえて田面はるけき淀の川船  宣胤

92 述懐  撫はやの憂世の風のはけしさはたえたる峯も聲やのとめむ  為廣

93 述懐  なにかせぬ今たに末の世かたりにたとへはのこるその名ありとも  其綱

94 懐舊  さまさまにかはりもて行く老の後うかりしもとの身をも恋ひつつ  教國

95 夢  うつつには又もかへらぬいにしへをうちぬる夢にみてそなくさむ  勾頭内侍ト云ヒ傳フ

96 神紙  立ちのほる朝日を見てそ浪の底にやはらけそめし光をもしる  宗祇

97 釋教  むねの内にやとしとゝめてむかふかなはしの箕よりいてし月影  道奥

98 祝  神の代をかそへんとすれは海もあさく君をあふけは山もおよはし  宋世

99 不遇恋  よそにのみやみのうつつも又しらすはかなき夢に身をやつくさん  實隆

100 逢不會恋  そのままに後世もしらて一夜川わたるやなにの夢路なるらん  為廣



参考情報関連
参考情報

 宗祇奉納短冊筥は杉の白木材で、蓋の表に

 百首和歌 杉平左衛門殿相良遠江殿 宗祇

とあり、また箱裏には

 此箱雖爲聊爾有宗祇 見外齊 判形之〔  〕此御百首明應五年乙卯三月十八日至防州山口下著之

とある。

 宗祇は当時の歌壇を風靡した連歌の第一人者で、大内政弘の知遇を受けて文明12年(1480)と延徳初年(1489頃)の二度来山した。

 毛利秀元は長府藩初代の藩主で、その寄進の短冊筥は、内外金梨地金粉高蒔絵文様種と、緑金粉沢掛の豪華なもので、蓋裏に毛利宰相秀元と記す。




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