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2020/03/06 【文化財小話】蓋井島のヒゼンマユミに会ってみて
一月某日、下関市吉見港の西方約10km、響灘に浮かぶ蓋井島へ、県指定天然記念物「蓋井島のヒゼンマユミ群落」の現地視察に行ってきました。
ニシキギ科の常緑小高木であるヒゼンマユミは、明治39年、長崎県で発見されたことからその名(肥前真弓)がついたとされ、長崎県諫早市では、国の天然記念物に指定されています。九州、沖縄など暖帯から亜熱帯に分布する南方系の植物で、蓋井島は福岡県沖ノ島などとともに分布の北限線上にあること、島北部に広がる照葉樹林に広く散在し、大きいものでは幹周り1.8mと、本種としては最大級の成長を遂げていること、特に西側斜面の一部には他に例を見ないヒゼンマユミの優占群落があることなどから、昭和57年、県の天然記念物に指定されました。
冬の日本海の荒波にもまれること40分、漁港から山道入口まで徒歩20分、更にそこから道なき道(急斜面)を40分、道標のビニールテープを頼りに必死で歩き、漸くヒゼンマユミの群落に辿り着くことができました。温かみを感じる手書きの看板には「おくまゆみ」(地元での呼称)の表記。秘境の天然記念物は、しんと静まり返った林の中に凛と佇んで、不思議な存在感を放っていました。
10年程前には、指定地周辺に多くの竹が繁茂していたそうですが、所有者や自然観察指導員の有志の方々などによる伐採が続けられてきたことから、現在はすっきりとした環境となっていることに安堵しました。と同時に、これから更に高齢化、人口減少が進んでいく中で、この険しい山中のヒゼンマユミの管理を、誰が、どのように行っていくべきなのか、考えさせられました。
先の文化財保護法改正(平成31年4月1日施行)にあたっても、「過疎化・少子高齢化などを背景とした文化財の滅失や散逸等の防止が緊急の課題」であり、「地域社会総がかりでその継承に取り組む」必要性が指摘されているところですが、このヒゼンマユミもまさにそうした一例であり、今後も、所有者や市・県での話し合いはもちろん、地元や関係団体の皆様にも協力を頂きながら、状況の変化に合った維持管理のあり方を考えていかねばと痛感した一日となりました。 (h)
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