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2022/03/01 【文化財小話】みなさんは「分銅形土製品」って知っちょる?
発掘調査現場からは、当時の人々が使っていた道具や生活の痕跡がたくさん発見されます。出土した石器や木製品、土器の形や文様などの特徴を元に、遺跡の時代や性格、当時交流のあった地域などを特定していきます。その手がかりとなる遺物や痕跡の量が多ければ多いほど、より正確に特定できるというわけです。
今回は弥生時代の特徴的な遺物「分銅形(ふんどうがた)土製品」について紹介します。この名前は、江戸時代から戦前にかけて使われていた棹秤(さおばかり)のおもりの形に似ていることに由来します。板状の土製品で、上半部に人面が表現されているものが多く発見されています。政策時期は今から約2000年前の弥生時代中期から後期にかけてです。分布範囲は、岡山県吉備地方を中心に瀬戸内沿岸地域や山陰地方に広く分布しています。今広くと言いましたが出土量は少なく、大きさや形、表現技法などには地域差がみとめられます。用途については、厄除けのお守りや豊作を願う祭祀具、うらないの道具などいろいろと意見があるのですが、具体的にはよくわかっていません。
山口県内では、柳井市や熊毛郡など県東部の沿岸部を中心に、周南市や防府市からも出土例が報告されています。今から20年前、私が調査を担当した遺跡(柳井市・中院遺跡)からも分銅形土製品(図1)が出土しましたので少し紹介します。
出土した土製品は、ひと目でその可愛らしい表情に心を奪われそうになるほど、他の遺物とは一線を画す存在感でした。発見場所は竪穴住居内で、残存状況は全体の約1/4、下半分は見つかっていません。
顔面表現ですが、鼻と眉は細い粘土ひもを貼り付けて立体的に表現されています。頭髪は表裏に施され、目は爪かヘラ状工具を押し当て、優しい表情に仕上げています。その表情から勝手ながら、人形のモデルは女性や幼い子ではないかと想像してしまいます。
この表現技法や形がよく似ている土製品は、じつは海を隔てた伊予地方(愛媛県松山市)の遺跡からも発見されています。また、他の遺物(壺・甕・高杯)にもこの地方と特徴を共有する遺物が多数出土していることから、当時は人や物と共に文化交流も盛んに行われていたことが想像できます。現在、柳井市と松山市を結ぶ連絡船(防予汽船)が就航していますが、2000年前も今と同様の交流が行われていたことは驚きですね。
山口県には、県の指定文化財になっている有名な
分銅形土製品(田布施町・明地遺跡)が存在します。図1の物と比べて大きさや厚さなどひと回り大きいものです。目鼻眉の表現技法は共通しており、同じように伊予地方との関わりの深いひと品といえます。現在、本物そっくりのレプリカが山口県埋蔵文化財センターに展示してあります。ぜひ一度足を運んで確かめてみてください。
最後に、「ほっちょるん」(山口県埋蔵文化財センターイメージキャラクター)を紹介します。キャラクターのモデルは、もちろん明地遺跡の土製品です。ゆるきゃらブームには乗り遅れましたが、癒やし系です。埋文センター主催の催し会場では、ほっちょるんがプリントされたのぼり旗が皆さんをお迎えしています。それを見つけた際は、ぜひ会場内をのぞいてください。
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