ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
  1. ホーム>
  2. トピックス>
  3. トピックス詳細

トピックス詳細


2022/11/18 【トピックス】文化財建造物の防火対策について

 このたび、令和2年度より整備事業を行っていた国宝瑠璃光寺五重塔の防災施設が完成しました。そこで今回は、文化財建造物の防火対策について紹介します。

 ご存じの方も多いとは思いますが、平成31年のフランスパリのノートルダム大聖堂、沖縄の首里城跡の火災を受け、全国的に文化財建造物の防災対策の重要性が再認識されたところです。文化庁でも国宝・重要文化財の防火設備等の緊急状況調査(過去のトピックスを参照)をもとに、「国宝・重要文化財(建造物)の防火対策ガイドライン」や「重要文化財(建造物)等防災施設整備事業(防災施設等)指針」を整備し、国宝・重要文化財(建造物)の防火対策が進められています。

 防火対策として整備させる設備としては、自動火災報知機、消火設備、避雷設備が挙げられます。
・自動火災報知機
 火災が起きたことを自動で感知し、所有者や管理者へ知らせるための設備です。古くから空気管と呼ばれる熱感知器が使用されてきましたが、感知までに時間がかかることから、現在では煙感知器や赤外線センサーを用いた炎感知器が推奨されています。所有者等が建物にいないことが多い場合は、自動で最寄りの消防署へ通報する装置が設けられる場合もあります。
・消火設備
 自家出火した場合の初期消火や、近隣火災への延焼防止のための設備で、消火栓、ドレンチャー、スプリンクラー、放水銃等が挙げられます。
 自家出火の場合、通常は地元の消防が消火活動を行いますが、文化財の場合、消防が到着するまでに燃え広がってしまうと文化財価値の損失につながるため、所有者自らが初期消火を行うことが大切です。消火栓は初期消火の際に用いられることとなりますが、文化財建造物では2~3人で使用する通常のものではなく、1人でも使用可能な易操作性のものが推奨されています。ドレンチャーやスプリンクラーも同様に初期消火のための設備ですが、自動で放水を行う性質上、誤作動の場合は文化財を傷めることにもつながるため、設置・運用方法については慎重に検討する必要があります。
 屋根を植物性の材料で葺いている場合は、近隣火災からの延焼を防止する必要があります。離れた場所であっても火の粉により、屋根が延焼することが考えられます。そのため、放水銃を設け、屋根面に散水をすることで延焼を防止します。
・避雷設備
 雷から文化財を保護する設備です。一般的に知られている避雷針を用いて電流を地中に流し建物を保護する設備(雷保護システム:LPS)の他、近年では自動火災報知機等の電気設備を雷から保護する設備(雷サージ保護対策:SPM)の設置も推奨されています。

 その他、放火を防止するための防犯設備等、その建造物ごとに必要となる設備が設けられる場合もあります。
 また、これらの設備を設置していたとしても、経年等により故障する場合もありますので、定期的に点検することも大切です。

 文化財建造物は焼失してしまうと、その文化財価値を損失し、復元することが困難な場合もあることから、恒常的な防火対策に努める必要があります。山口県でも引き続き、文化財の防火対策に取り組んでいく予定です。(t)



ページトップへ