涅槃図(ねはんず)とは、釈迦(しゃか)が生涯を終える場面を表したもので、お寺で釈迦を追慕する涅槃会(ねはんえ)の本尊として利用されることが多いものです。沙羅双樹(さらそうじゅ)の4本が白く枯れ、釈迦を取り巻く人物や動物たちが悲しみ泣く様子を表す一方で、金色に変化した釈迦の身体をより大きく描くことで、肉体は滅んでも仏法は永遠に変わることがないという教えを伝えています。
上空からは釈迦の従弟(いとこ)に導かれ、二人の侍女とともに神々の住む世界から飛来する釈迦の母のほか、菩薩・仏弟子・俗人・鬼神など、説法に集まった人々52人と、動物・鳥・虫など52匹(羽)が描かれています。
絹本着色仏涅槃図
図の右下には「土佐守入道経光筆(とさのかみにゅうどうけいこうひつ)」の落款(らっかん)(作者の署名)があり、室町時代の画家・土佐行広(とさゆきひろ)が出家の後、経光と名乗っていた時期の作品と分かります。土佐派は室町時代初期から近代を迎えるまで、日本の伝統的な絵画様式を維持してきた流派で、行広は、15世紀初めから半ば頃にかけて室町幕府の絵師として活躍し、足利義満(あしかがよしみつ)像(京都府・鹿苑(ろくおん)寺蔵、重要文化財)などの足利将軍家の肖像画や、融通(ゆうづう)念仏縁起絵巻(京都府・清凉寺)など、当時を代表する絵巻の制作にも参加したことが知られています。
土佐守入道経光筆の落款
現在のところ、京都周辺以外で行広の作品が確認されているのは、この図のみであり、地方への広がりが確認される、たいへん貴重な作品で、平成30年(2018)3月2日付けで山口県指定有形文化財となりました。詳しくは、絹本着色仏涅槃図の解説を御覧ください。なお、「絹本着色」(けんぽんちゃくしょく)とは、絹地に色つきで描かれたという意味です。
防府市の国分寺は、奈良時代に国ごとに置かれた寺のひとつです。今では、その多くが姿を残していない中で、現在でもほぼ境内の旧規模をとどめています。現在の金堂は江戸時代中期に再建されたもので、国指定重要文化財となっています。その他、木造日光菩薩立像、月光菩薩立像などの国指定重要文化財を多数有しており、境内地も国指定史跡となっています。
なお、この図は通常公開はされていませんので、御了承ください。(慎)
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